2016年9月27日発表
横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:西島 剛志)は、安全計装システム「ProSafe®-RS(プロセーフ・アールエス)」の機能を強化した「ProSafe®-RS R4.02.00」を開発、9月28日から販売を開始しますのでお知らせします。
今回は、プラントのライフサイクルにわたって安全を確保するための管理手法である、機能安全管理(Functional Safety Management:FSM)を支援するために、「ProSafe-RS」のエンジニアリング環境「オートメーション・デザイン・スイート(ADスイート)」の機能を拡張しました。
開発の背景
石油やガス、石油化学、化学などのエネルギー、素材産業では、事故の防止、環境保全の観点から、操業時の安全確保に向けたさまざまな対策が行われています。操業時の異常を検出し、シャットダウンなどの緊急動作を安全に実行する安全計装システムの導入もそのひとつです。近年は、プラントのライフサイクルにわたり、安全上の配慮が不十分な作業やプラントの障害による事故のリスクを社会的に許容される範囲内に収めるための管理手法である、FSMへの関心が高まっています。国際規格IEC 61508とIEC 61511※1はFSMを規定しており、これらの規格に沿ったFSMを行ってプラントの安全を確保したいと考えるお客様が増えています。一方で、方針策定、管理体制の構築、計画立案、実行管理、教育訓練などFSMの作業は、多岐にわたるうえに組織をまたがって取り組むため、FSMに関わる管理者や作業者にとって重い負担となりがちでした。
今回当社は、安全計装システム「ProSafe-RS」のエンジニアリング環境「ADスイート」に、お客様によるFSM遂行の負担を、プラントのライフサイクルを通して軽減する機能を追加しました。また、安全計装システムの動作に対する理解を容易にする機能を追加しました。これらにより、IEC 61508とIEC 61511に基づくFSMの効率的で確実な遂行を支援します。
※1 IEC 61508とIEC 61511:
IEC 61508は、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)が制定した電気・電子・プログラマブル電子機器の機能安全に関する規格。これに基づき、石油や石油化学、天然ガスなどのプロセス産業向けに制定された機能安全の規格がIEC 61511。
機能強化の概要
- FSMに関する計画と実行管理を支援
FSMに関する管理体制の構築、作業計画の立案、および実行管理を行うためのツールを「ADスイート」に追加しました。お客様はこのツールを使って、体制表、ワークフロー、およびチェックシートを作成し、プラントのライフサイクルの各フェーズにおいてやるべきことを明確化して、効率よく作業を進めることができます。お客様の負担を軽減してFSMの確実な遂行を支援します。
安全ライフサイクル支援機能画面例(FSM支援) - FSMに関する情報の継承を支援
プラントのライフサイクルにわたってFSMを行うには、関連する情報を運転担当と保全担当間で共有し、担当者が交代する際にも確実に継承できる仕組みが必要です。「ADスイート」は、エンジニアリングしたソフトウエア資産をデータベース管理していましたが、今回はこれに加え、FSMに関する体制表やワークフロー、さらには自動実行テストの簡易プログラム(スクリプト)やテスト結果も「ADスイート」で一括管理できるようにしました。FSMに関する情報の変更は直ちにデータベースに記録され、さらにいつでも最新の情報をドキュメント出力できますので、組織間で異なるバージョンの情報を参照するといったトラブルを防ぐことができます。また、長いプラントライフサイクルにおいても、担当者交代時の引き継ぎの確実な遂行を支援します。 - 安全計装システムの動作に関する理解を支援
「ProSafe-RS R4.02」の制御ロジックを構築するためのプログラミング言語として、お客様による要求仕様書で使われる入出力の関係を表形式で示す原因/結果表(Cause&Effect表)と状態遷移図を使用できます。また、緊急時の安全計装システムの動作を、簡易HMIやCause&Effect表および状態遷移図の上でシミュレーションして確認することができます。これらにより、安全計装システムの動作の把握が容易になります。例えば、安全要求仕様を担当するお客様は、安全計装システムのエンジニアリング段階で、安全要求仕様の検討漏れなどの問題点に気付き早期に修正することができます。また、IEC 61511では、安全計装システムの動作を運転員が理解するよう規定していますが、そのための教育ツールとしても活用できます。誤った知識に基づいて行動することなく、FSMの確実な遂行が可能になります。
安全ライフサイクル支援機能画面例(シミュレータ)
「ProSafe-RS」について
2005年2月に発売した安全計装システムです。安全度水準※2SIL3レベルを実現する機器として、第三者機関による認証を取得しています。統合生産制御システムCENTUMシリーズと組み合わせて使用することにより、プロセス制御システムと安全計装システムを統合できるという特長を有しています。発売から11年間で国内外の約2,000プロジェクトに納入し、安全計装システム市場におけるシェアは業界トップクラスです。
※2 安全度水準:
国際電気標準会議(IEC)が制定した電気・電子・プログラマブル電子機器の機能安全に関する規格IEC61508で導入されている安全性評価の尺度。SIL1からSIL4 までレベルが区分されています。プラントに安全対策を施さない場合と比較して、リスクの度合いをSIL3は1/1000から1/10000の範囲に、SIL4は1/10000から1/100000の範囲に低減できます。
前述の拡張機能は、Trinity Integrated System社のiDefine for ProSafe-RSを使用して実現しています。iDefine for ProSafe-RSは当社からのみ購入可能です。
主な市場と用途
石油、ガス、石油化学、化学、薬品、電力、鉄鋼などのプロセス産業各種プラントや、石油・天然ガスの生産設備における、緊急プラント遮断システム(ESD)やバーナー管理システム(BMS)および防消火システム(FGS)の構築とFSM遂行支援
以上
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