背景
IoTやAIなどの新しい技術が、制御システムにも広がりつつあります。これらの新技術を導入することで、より高度で効率的な操業が可能となるなど、さまざまなメリットが期待されます。しかし、一方で新たなリスクの発生が懸念されます。新技術のメリットを最大限に生かし、安全・安心な制御システムを実現するためには、新技術に対応したセキュリティ対策が欠かせません。YOKOGAWAでは、システムや操業に関する豊富な知識と経験を生かして、制御システムに適したセキュリティ対策の研究開発に取り組んでいます。この取組みを進めるにあたり、SICE・JEMIMA・JEITA(*)などの学会や工業会の制御セキュリティ関連活動に参加し、有識者やユーザとの意見交換を行いました。その活動を通して、制御システムにおけるセキュリティの課題やリスクを把握したり、現場の声をユーザからお聞きしたりしながら、現場のニーズや運用状況に合った新しいセキュリティ施策の実現を目指しています。
* SICE: 計測自動制御学会、JEMIMA: 日本電気計測器工業会、JEITA: 電子情報技術産業協会
技術
制御システムは、通常長期にわたって運用されるので、制御システムのセキュリティ対策も長い期間有効な施策であることが望まれます。イノベーションセンターでは、制御システムが持つ「限られた場所に設置されたシステムを、限られた人員が、限られた目的に使用する」という特性を生かしたセキュリティ施策の設計指針として「情報物理セキュリティコンセプト」を検討しています。「情報物理セキュリティコンセプト」に基づき、次の特徴を持つセキュリティ施策が必要であると考えています。
- 原理・動作・効果が明快である。
- 物理的要素を利用することで、遠隔から攻撃しづらい。
- アップデートが必要な要素を排することで、長期間にわたり危殆化(*)しづらい。
我々は、「情報物理セキュリティコンセプト」の実装例として、USBメモリ消去装置「MemWiper」(**)の研究開発を行っています。「MemWiper」は、制御システムからデータを安全に持ち出すことを実現するためのセキュリティ対策装置です。USBメモリをPCに接続する際に、USBメモリの内容を消去するもので、USBメモリからPCへのウイルス感染リスクを除去します。制御システムからの安全なデータ持ち出しを実現することで、より積極的なデータ利活用を支援します。
* 状況の変化などにより、対象が危険にさらされるようになること
** MemWiperは横河電機(株)の技術ライセンスに基づき(株)アルテクスから販売されています。
将来構想
制御システムを構成する技術は日々進化しています。それに伴い、セキュリティリスクの状況も変化しています。制御システムを知り、制御システムを創るYOKOGAWAの知見を生かして、その時代に合ったセキュリティ技術を研究開発することで、社会の安全・安心に貢献することを目指しています。我々は、「情報物理セキュリティコンセプト」を始めとする制御システムに適したセキュリティ施策の研究を進め、制御システムの安全・安心を確保していきたいと考えています。