横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

Vol.64 No.1 (2021)

No.1 横河のDX 特集

巻頭言 DXの世界的潮流と日本の製造業の役割 (PDF:614KB/2ページ)

  • 加茂 純*1

*1 一般社団法人 CDO Club Japan 代表理事


横河電機のDigital Transformation(DX)への取り組み (PDF:3120KB/6ページ)

  • 舩生 幸宏*1

*1 執行役員(CIO),デジタル戦略本部 デジタルソリューション本部 DX-Platformセンター

   横河電機がDigital Transformation(DX)を本格的にスタートしたのは2018年にさかのぼる。現在の中期計画であるTransformation 2020(TF2020,2018-2020)の重要事項として掲げられていることもあり,これまでの約3年間においてDXを推進するための取り組みが活発に行われてきた。
   当社におけるDXは,主に社員の生産性向上に焦点を当てたInternal DXと,顧客向けに付加価値のあるデジタルサービスを開発および提供するExternal DXに大別されるが,これらは,Internal DXで試行錯誤した結果をExternal DXに繋げるShow Roomアプローチを採ることにより有機的に統合される。DXのプラクティスや方法論は未だに十分には確定しておらず,試行錯誤をしながら進めていかざるを得ない状況であることは周知の通りである。
   本稿では,当社のDXに関するこれまでのアプローチを概観し,DXプラクティスの一例としての情報を読者に提供する。


データドリブンマネジメント化への取り組み (PDF:967KB/6ページ)

  • 加藤 享夫*1

*1 デジタル戦略本部 グローバルアプリケーション・データマネジメントセンター 戦略システムソリューション部

   自社の競争力維持・強化のために,世の中のあらゆる企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。横河電機もDXの一環としてデータドリブンカルチャーの醸成に取り組み,経験や勘ではなく,データに基づいて意思決定を行うことを習慣化しようとしている。
   具体的には,専門的なデータ分析の知識やスキルを持ったデータサイエンティストではなく,Self-service Business Intelligence(Self-BI)ツールやSelf-service Machine Learning(Self-ML)ツールを利用し,データを利活用できる社内の人財,いわゆる市民データアナリストを育成・確保すべく,YOKOGAWAグループ全体でVDA(Virtual Data Analyst)の推進活動を進めている。本稿ではその取り組みを紹介する。


デジタル技術を活用したCX向上への取り組み (PDF:985KB/4ページ)

  • 梶川 俊一*1

*1 デジタル戦略本部 DX推進部 DX企画課

   近年,ビジネス環境が大きく変化するなか,企業が各種データを有効に利用するためにデジタル技術を活用する重要性が増している。デジタル技術活用が加速する際,重要なキーとなるのがカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience: CX)である。企業は,デジタル技術を活用することで,顧客との取引前の段階から取引後のサポートに至るまでの一連のプロセスにおいて,顧客に価値を提供することが求められている。本稿では,横河電機におけるデジタル技術を活用したCX向上の取り組みを紹介する。


工場におけるデータ駆動型マネジメントを実現するDigital Factoryへの取り組み (PDF:4202KB/8ページ)

  • 藤原 秀樹*1

*1 デジタル戦略本部 DX推進部 デジタルファクトリー課

   製造業種におけるOperational Technology(OT)領域のDigital Transformation(DX)化が加速する中,横河電機のソリューションやノウハウは重要な役割を担っている。それらをユーザへ提案する際に,我々が自社工場のOT領域データを活用し,生産性の向上を実現している姿を示すことは,ユーザが参考にできる有用な先例となる。我々は,OT領域データの活用によるデータ駆動型マネジメントを目指し,次の3つを実現した工場をDigital Factoryと定義し,自社工場のDX化を推進している。それらは,①横河グローバル工場のOT領域データを1つに集約,グローバルに生産性向上を実現させるための基盤となるOT Data Lakeの構築,②OT領域データや画像を活用して最適化・自動化を実現するAIの導入,③COVID-19のように,人の自由な往来が制約される環境下においても,事業や業務の継続を可能にするリモートオペレーションの実現,の3つである。このDigital Factoryへの取り組みは,自社向けのInternal DXの施策の一つであるが,ここから得られるソリューションやノウハウなどの成果はExternal DX活動に活かされ,既存ビジネスのDX化,新規DXビジネスの創出を推進するとともに,ユーザへ提供する価値を向上させ,DXにおける横河電機のプレゼンスを確立させる役割を持つ。本稿では,Internal DXへの取り組みと,External DXへの展開について紹介する。


IT/OT統合環境におけるセキュリティへの取り組み (PDF:2073KB/6ページ)

  • 塩崎 哲夫*1

*1 デジタル戦略本部 グローバルインフラ・セキュリティセンター

   横河電機(YOKOGAWA)では,2019年から社内システムのセキュリティ監視の内製化を推進し,さらには社外向けモノのインターネット(IoT: Internet of Things)サービスのセキュリティ監視も始めている。セキュリティ監視センター(SOC: Security Operation Center)の社内開発については,その技術的な難しさや運営体制の問題から自社開発を躊躇する企業も多い。本稿では,SoCを社内開発した経緯,その技術的なポイント,運用体制について説明し,YOKOGAWAのサイバーセキュリティに対する方向性を紹介する。


セキュリティを考慮したグローバルなワークスタイル環境の整備 ―「2025 年の崖」克服の一例― (PDF:3205KB/8ページ)  ※Web版でのみ公開

  • 黒﨑 裕之*1

*1 デジタル戦略本部 グローバルインフラ・セキュリティセンター

   ここ数年来,多様な働き方へのニーズが高まっている。特に,新型コロナウイルス感染拡大の影響により導入が進んだテレワークやリモート環境をベースとした働き方は,感染収束後も継続すると言われている。他方で,少子高齢化は日本だけでなく世界各地が抱える問題となり,労働力の減少はグローバルな課題になりつつある。このような状況下,多様な働き方と生産性の向上を同時に実現するグローバルなワークスタイル環境の重要性が増している。
   本稿では,横河電機が推進してきたセキュリティを考慮に入れたグローバルなワークスタイル環境の整備について,IT ガバナンスの最適化という視点を交えて紹介する。


プロセス産業におけるデジタルトランスフォーメーション (PDF:1145KB/8ページ)

  • Joseph Ting*1

*1 Digital Customer Experience, Digital Platform Center, Yokogawa Electric International Pte. Ltd.

   製造業者はリスクを最小限に抑え,ミッションクリティカルなレベルの利用可能性,安全性,セキュリティを実現するため,従来から慎重かつ段階的なアプローチを採ってきた。そして,何十年もわたり,技術は人々が既に実現してきたことを,さらに経済的かつ効率的にしてきた。
   今日,デジタル革命は,産業,企業,部門,社会を根本的に再編成することを可能にしている。持続可能な収益性を確保するために,オペレーションや製造の柔軟性と敏捷性を高めつつ,投資利益率(ROI)を最大化しなくてはならない。これらの目標を達成するために,デジタルトランスフォーメーション(DX)に目を向ける企業が増えつつある。
   本論文では,プロセス産業がデジタルトランスフォーメーションについてどのように考え,それがどのようにビジネスモデルや戦略と関係し,マクロ規模でのイネーブラーが何であるかを説明する。また,情報技術とオペレーショナルテクノロジーの収束と,産業オートメーション(IA)技術スタックの影響(IAをさらにスマートにすること)についても述べる。どの部分でオペレーションや製造をデジタル化(バリューマップ)するのか,役割やリーダーシップ,組織的な変革管理,DXへ向けた実践的なステップについて説明する。
   トランスフォーメーションの成功は,構造化されたアプローチ,意欲的なリーダーシップ,そしてビジネスプロセスや技術,組織としてのニーズを理解している専門家とのパートナーシップ形成とを組み合わせた構造的なITとOTの収束方法にかかっている。


スマートマニュファクチャリングのためのYokogawaクラウドアーキテクチャ (PDF:1289KB/10ページ)

  • M K Naveen Kashyap*1

*1 Digital Innovation & Services, Digital Platform Center, Yokogawa Electric International Pte. Ltd.

   デジタルトランスフォーメーション(DX)は,デジタル技術と情報の力を組織の人々,プロセス,システムに適用し,ビジネスパフォーマンスを劇的に転換させることを目指すことを指す。スマートマニュファクチャリングは,企業の製造面に適用されるDXの一形態である。多くのスマートマニュファクチャリングの取り組みでは,自律的なオペレーションの実現を目指している。DXとスマートマニュファクチャリングの成功を定義する要因のうち,主なものは技術スタックと,それによる既存のシステムやビジネスプロセスとの相互関係を捉えるデジタル・エンタープライズ・アーキテクチャである。
   DXアーキテクチャは,様々なソフトウェア・アプリケーションや拡張的なオファリングによって,データ取得から価値の提供まで,価値創造プロセスの全体を捉える。本論文では,既存の生産資産や関連するIT資産を組み合わせた「プラントフロア」を始めとする六つのレイヤーにより,YokogawaのDXアーキテクチャのエッセンスについて説明する。最上レイヤーは,コンサルティング,エンジニアリング,システム統合,サポートなどのサービスを通じて創造した価値を顧客に伝えることを可能にする拡張的なオファリングによって構成されている。間にある四つのレイヤー(エッジ,コンピューティング・インフラストラクチャ,プラットフォーム,アプリケーション)は,DXを実現可能にする主な技術的要素を表している。


収益性と持続可能なオペレーションに向けたサプライチェーンのデジタルトランスフォーメーション:業界のニーズと近年の実績 (PDF:1506KB/6ページ)

  • Mike Aylott*1

*1 Chief Technology Officer, KBC (A Yokogawa Company)

   炭化水素処理産業では,低コストかつ最終的に利益を生み出すような形で事業を展開するためのソーシャルライセンスを維持するために多大な圧力を受けている。気候変動や来たるエネルギー転換は,変化しつつある世界の秩序に適応しようとしている組織にとって,供給や需要のパターンが急速に変化する厳しい世界へと繋がる。本論文では,デジタル技術がどのようにして現在の業務計画の立案,スケジューリング,制御の在り方を進化させ,これらの需要に対応しようとしている組織を支援するのかを検討していく。また本論文は,横河のデジタル技術によって,常に変化と改善が進んでいる移りかわりの激しい世界に適応することで生産量やエネルギーの利益改善を得たKBC社の実績からの事例を用いながら,従来形のデジタル化や手順の自動化にとどまらない将来に向けたより大きな構想を概観する。さらに,現在の活動や,従来から実施している第一原理や物理法則によるモデリングに基づいたデータサイエンスを,どのように活用しているかについても説明する。


プロセス産業におけるAIの適用 (PDF:5570KB/8ページ)

  • 鹿子木 宏明*1

*1 横河プロダクト事業本部 コントロールセンター

   AIを用いてプラントの問題を解決しようとする場合,参考にできる研究がすでに存在するかどうかによってアプローチが異なってくる。本論文では,まず参考にできる既存のAI研究を見極める具体的な方法と理由を論じる。対象としている問題に利用できそうなAI研究がすでに存在する場合には,問題解決に適した公開アルゴリズムを利用し,用途に合わせてAIプラットフォームを選択することが重要となる。一方,そういったAI研究がまだ存在しない場合には,独自にドメイン知識とAI技術を深く融合させる必要があり,そのことが最大の難関となる。本論文で提示した解決方法は,プラントエンジニア自身がAIを駆使できるようにするというものである。今後の展望として,AIによるプラント自律制御も研究が進んでおり,プラントの未解決問題に対する将来のソリューションの一つになることが期待される。


オンライン厚さ計WEBFREX NV用新フレームQC1F16 (PDF:1147KB/4ページ)

  • 古賀 悠策*1
  • 谷藤 大輔*2
  • 原 峻士*3

*1 横河プロダクト本部 センシングセンター アナライザー企画部
*2 横河プロダクト本部 センシングセンター 開発統括部 アナライザー部
*3 横河プロダクト本部 営業センター アナライザー営業統括部 P&Wソリューション営業部

   横河電機は1962年に製膜装置用のオンライン厚さ計を発売開始して以来,測定・制御技術を進歩させながら,紙やフィルムなどのシート状製品の品質と生産性の向上に貢献してきた。現在,紙向けにB/M9000VP,紙以外の汎用シート向けにWEBFREX NV,電池電極シート向けにWEBFREX3ESの3機種をラインアップしている。近年,EV(Electric Vehicle)シフトによるリチウムイオン電池プラントへの投資が活況となるなか,電池電極シート向けの厚さ計WEBFREX3ESが広く利用されている。リチウムイオン電池の部材であるセパレーターシートの需要も高まっており,特に海外市場が拡大している。このような背景を受け,今後ターゲットとする市場のニーズに応え,各国の法令やIoT(Internet of Things)化に対応し,さらに保守性を向上させるための新しいプラットフォームとして,WEBFREX NV QC1F16(F16 フレーム)を開発した。本稿では,F16フレームの特徴とそれを実現する技術について紹介する。



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