横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

Vol.63 No.1 (2020)

No.1 横河のAI 特集

巻頭言 AI社会の未来 (PDF:1004KB/2ページ)

  • 杉山 将*1*2

*1 理化学研究所 革新知能統合研究センター センター長
*2 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授


YOKOGAWA のAI技術への取り組み (PDF:2820KB/4ページ)

  • 大原 健一*1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター DXデザイン部

   世の中ではAI技術の目覚ましい発展により新たな価値の創造が行われている。IA(Industrial Automation)業界に目を転じると,IIoT(Industrial Internet of Things)技術の発展による測定データの増大,操業対象範囲の拡大,材料の品質のばらつき,熟練技術員の不足,といった様々な問題が生じており,AI技術を活用してこれらの問題を解決することが望まれている。そのような中,YOKOGAWAは,AI技術を活用して測定データを分析するだけに留まらず,ドメイン知識を活用してお客様の目標を達成できる操業を実現することまでを目指している。この特徴を,「今を知り,将来を予測し,操業を最適化する」としてまとめ,AI Visionとして発信している。
   本稿では,このAI Vision の下,YOKOGAWAが提供するAI関連技術や製品と,それを用いて課題を解決した実績を報告する。さらに,プラント操業を自動化するというような,将来を見据えた技術への取り組みについても紹介する。


石油精製,石油化学分野でのAI活用 (PDF:2613KB/4ページ)

  • 大谷 哲也*1

*1 デジタルエンタープライズ事業本部 デジタルエンタープライズソリューションセンター

   人工知能(AI),機械学習,データサイエンスなどの技術が近年著しく進歩して,従来は人手で行うことで時間が掛かっていた作業を,コンピュータが代わりに処理できるようになってきた。製造業においても,技術の進歩に伴って大量のデータを扱えるようになったため,大量のデータからAIが自動的に課題を発見して,解決策を提示することが望まれている。本稿では,石油精製,石油化学分野における,設備と品質に関する課題に焦点を当てて,AIを活用して課題を解決する方法と事例を紹介する。


エチレンプラントへのAIの適用事例 (PDF:1364KB/6ページ)

  • 神宮 善行*1
  • 後藤 宏紹*2

*1 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター AIビジネス開拓部
*2 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター

   エチレンプラントのような連続運転を行う石油化学プラントでは,予期しない設備故障やメンテナンスの発生がプラントシャットダウンを引き起こす。これを回避するために,運転状態を常に監視している。しかし,プラントでは様々な要因が複雑に絡み合い問題が発生するため,人がプラントの状態を把握し,予期しない故障・メンテナンス発生の予兆を知ることは難しい。このような問題を解決するため,我々はエチレンプラントのお客様と一緒に,AIを使った解析(AI 解析)で問題を解決する活動を実施した。お客様からフィードバックを受けながらAI解析を行った結果,数多くのセンサパラメータから問題の原因となるパラメータを見つけ出し,プラントの状態把握や異常予兆検知が可能なAIモデルを提供した。本稿では,この活動の中で実施したAI解析事例の紹介と,AIがお客様に提供できる新しい価値について説明する。さらに,AI解析による課題解決ビジネスの拡大の進め方について述べる。


プラントデータにおける転移学習の可能性 (PDF:1893KB/6ページ)

  • 藤井 涼平*1
  • 後藤 宏紹*2

*1 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター AIビジネス開拓部
*2 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター

   プラントには同じようなプロセスまたは設備が複数存在する。しかし,プラント内を流れている流体,その流速や温度などの物理的条件はそれぞれ異なる。プラント内の異常を検知するために,教師あり学習による機械学習を用いてモデルを作成しようとすると,これらのすべてのプロセスまたは設備においてトレーニングデータを収集する必要があるため,コスト面で問題がある。また,プラントによっては異常の発生頻度が極端に少なく異常状態のデータ取得が困難な場合があり,教師あり学習でモデルを作成することの妨げとなっている。しかし,あるプロセスまたは設備のトレーニングデータを,他の同じようなプロセスまたは設備に適用してモデルを作成することができれば,これらの問題を解決することができ,機械学習の適用範囲を拡大することが期待できる。本稿では,教師あり学習が持つ問題を解決するアプローチとして転移学習に注目し,多くの設備で発生する同一現象であるキャビテーションの検知に転移学習を適用する実験を試みたのでここに紹介する。


Sushi Sensorによる傾向監視への機械学習技術の応用 (PDF:979KB/4ページ)

  • 佐藤 正彦*1

*1 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター AIビジネス開拓部

   横河電機は,保全のCBM(Condition Based Maintenance)化を狙い,機器や設備の状態を容易に収集できるSushi Sensorを開発した。従来のアプリケーションでは,傾向監視のためのアラームを出すしきい値を個別の機器に手作業で設定する必要があった。しかし,センサを大量に設置して監視することも想定するSushi Sensorを使う場合には,ノウハウと人手と時間を必要とするこの作業を,簡単化,効率化することが課題になる。我々は機械学習技術を用いて,この課題を解決した。
   本稿では,機械学習技術を用いた傾向監視システムの異常予兆検知の効率化,及びその検証のために作成したアプリケーションによる実証実験について説明する。


簡易導入可能なAI 製品群(レコーダ,PLC)の開発 (PDF:2051KB/6ページ)

  • 服部 仁*1
  • 坂上 正徳*2
  • 小郷 命*2
  • 出分 卓矢*3

*1 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター エッジソリューション統括部
*2 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター エッジソリューション統括部商品開発3部
*3 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター

   横河電機は,IA(Industrial Automation)分野のドメイン知識に基づき,独自のAI 技術を活用した解析の実績を積み重ねてきた。今回,製造や製品開発の現場で簡易に使えるAI 導入のニーズに応えるべく,高度なAI技術をベースとしてレコーダおよびPLC(Programmable Logic Controller)でAI対応を図った。
   AI未来ペン機能は,未来のデータを予測して描画する機能で,GX/GPシリーズに標準搭載した。また,AI違和感検知機能は,設備のいつもと異なる動作を違和感として検知し,予知保全につなげる機能で,Sushi Sensorとの併用が可能なGA10に標準搭載した。そして,Python言語の豊富なライブラリを活用してAIアプリケーションを効率的に開発できる産業用AIプラットフォームを,e-RT3 Plusで実現した。
   本稿ではこれらの狙いと開発のポイント等について解説し,現場でのAI利用の実現方法とその提供価値について述べる。


プラント制御AIの実現 (PDF:1035KB/4ページ)

  • 髙見 豪*1

*1 IAプロダクト&サービス事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター AIビジネス開拓部

   人工知能(AI)と呼ばれる技術への世の中の期待は高く,ビジネスへの投資も増加している。機械学習技術は,車の自動運転やロボット制御などにも利用され,FA分野では機械学習技術の応用が急速に発達している。一方PA分野では,プロセスデータを使ったデータ解析事例は増加しているものの,プロセスの制御においては,機械学習やAIを使った実用的な技術はまだ開発されていない。多くの場合,PID制御が主軸として使われ,複雑な制御が要求される場合は,専門家による高度制御技術が利用されている。
   今回,我々は,シミュレーションではなく実際の装置に対して,機械学習技術を適用することを考え,プロセス制御の教育用キットとして利用されている三段水槽を用いてAIによる制御を試み,成功した。本稿では,三段水槽プロセスを制御した機械学習技術と実験内容について紹介する。


製造環境(4M)の変化に強い生産システムの実現 -YOKOGAWA AI関連製品による操業改善- (PDF:2519KB/8ページ)

  • 煤孫 光俊*1
  • 大野 敏生*1
  • 佐藤 恵二*2

*1 横河ソリューションサービス株式会社 コーポレート本部 開発センター
*2 横河ソリューションサービス株式会社 ソリューションビジネス本部 コネクテッドインダストリーズビジネス開拓センター

   お客様の製造現場では,業務の維持/改善/突発事項への対応など多くのミッションを抱えている。日々これらのミッションを遂行していくだけでなく,業務を取り巻く環境の変化へも対応しなくてはならず,より一層変化に強い操業が求められている。お客様が環境の変化を捉えて臨機応変に対応していくためには,DCSの発明に相当するような工程管理手法のパラダイムシフトが必要である。
   本稿では,製造環境の変化に柔軟に対応するために,操業を最適化する新たな製造運転管理の業務モデルと,その業務を達成するための機能モデルを紹介する。さらに,この機能モデルに基づいたシステム構成と,システム内で活用するYOKOGAWA AI関連製品の位置づけを述べる。


エッジコンピューティングによる設備異常予兆検知ソリューション DUCSOnEX (PDF:2728KB/6ページ)

  • 白井 呂尚*1
  • 有吉 猛*2
  • 新福 敬介*2
  • 中林 暁男*3

*1 横河ソリューションサービス株式会社 ソリューションビジネス本部 コンサルティングセンターコンサルティング3部
*2 横河ソリューションサービス株式会社 インダストリー統括本部 インダストリアルソリューションセンター4部
*3 マーケティング本部 イノベーションセンター インキュベーション部

   日本の製造業は,労働人口の減少と高年齢化,設備の高経年化などの状況下において,多発する設備故障,人の操作ミスによる事故リスクの増大,不十分な設備管理コストの見える化,技術・技能の伝承不足など多くの問題を抱えている。このような問題を解決するためには革新的な仕組みが必要であり,その一つがデジタルトランスフォーメーションによるスマートファクトリーと考えている。昨今,IIoT(Industrial Internet of Things)やAI/機械学習/統計解析技術の活用により,異常予兆検知などベテランが行ってきた業務の代替が実現可能となってきている。そこで,機械学習機能を搭載したエッジコンピュータに装置の通常運転状態を学習させ,その後,装置を常時監視して「いつもと違う」状態を検知するソリューションを開発した。その結果,既設の情報インフラを活用しつつ,高度なIIoT アプリケーションを導入することが可能となった。本稿では,YOKOGAWAが提供するエッジコンピューティングによる設備異常予兆検知ソリューションの機能,要素技術の一つであるエッジ向けの解析技術,およびソリューションの適用事例を紹介する。


制御技術とAI技術の連携 さらなるプラント操業改善へ (PDF:2118KB/4ページ)

  • 高橋 洋*1

*1 横河ソリューションサービス株式会社 ソリューションビジネス本部 コンサルティング2部

   大量生産から多品種少量・変種変量生産に生産モデルがシフトしつつある製造業において,より複雑な生産設備のオペレーションが求められている。この課題の解決に向けたソリューションの開発を,NEDO事業として採択を受け実施した。本稿では,この事業の内容と,事業を通して得られた実績を紹介する。また,ソリューション開発の1つのテーマとして,AI技術の活用についても検討,開発を行い成果を得たので,これについても紹介する。



トップ