横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

Vol.66 No.1 (2023)

No.1 技術報告 特集

巻頭言 時代の大変革期における化成品・医農薬品生産 (PDF:638KB/2ページ)

  • 布施 新一郎*1

*1 名古屋大学大学院創薬科学研究科 教授


DX Readyに向けたGlobal IT Governance の必要性 (PDF:1850KB/8ページ)

  • 舩生 幸宏*1

*1 常務執行役員(CIO)デジタル戦略本部長 兼 デジタルソリューション本部 DX-Platformセンター長

   横河電機がDigital Transformation (DX) を本格的にスタートしたのは2018年にさかのぼる。DXとは“D”のデジタル化と“X”の組織変革の意味合いを成すが,企業のデジタル化を実現するためには,システム統合,ひいてはデータ統合は必須の活動である。
 当社の前中期計画Transformation 2020 (FY18-FY20) の下では,このグローバルなシステム統合・データ統合を目指し,前半の“D”のデジタル化にフォーカスした。当社を含めたグローバル製造業においては,ビジネスプロセス・システムが各Business Unit別・リージョン別に分かれてサイロ構造になっているのが通常であり,サイロ化したデータがデジタル化の妨げとなってDXは進まない。このグローバルなシステム統合・データ統合を行うためには,グローバルなITガバナンスの確立が必須条件となる。
 本稿では,何故,グローバルなITガバナンスの確立が重要であるのか,その背景を整理すると同時に,当社のグローバルITガバナンスのアプローチを概観し,DXプラクティスの一例としての情報を読者に提供する。


ペプチド医薬品原薬のフロー連続生産装置の開発 (PDF:2490KB/6ページ)

  • 久保 大輔*1
  • 小竹 佑磨*1
  • 足立 恭平*1
  • 服部 祐介*1
  • 小川 潤一*1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター ライフ研究開発部

   近年,製薬業界において原薬および製剤のバッチ生産から連続生産への転換の動きが活発化している。連続生産の利点として,生産量の需給に合わせやすいこと,必要なエネルギー量が少なくなること,省スペースであることなどが挙げられる。これまでの医薬品製造の主流はバッチ生産であったが,医薬品規制調和国際会議(ICH)による連続生産に関するガイドライン(ICH Q13)が2022年に最終合意に到達し,今後,医薬品製造への適応が進むと思われる。今回,ペプチド医薬品原薬のフロー連続生産を目的とした装置開発を行ったので紹介する。合成工程だけでなく分液などの後処理工程も含めた連続化を検討し,構築した試作機を用いて10残基のペプチド伸長を行うことでコンセプトを実証した。


第5世代移動通信システム(5G)の携帯端末からの電波によるシステム機器への影響 (PDF:2280KB/8ページ)

  • 丹波 守*1
  • 野村 大輔*2
  • 阿部 太亮*1
  • 室木 隆仁*1
  • 淺野 雄一*2
  • 鈴木 雅彦*1
  • 髙栁 尚士*2

*1 デジタルソリューション本部 システム開発センター システムハードウェア技術部
*2 デジタルソリューション本部 システム開発センター アドバンストハードウェア技術部

   横河電機の総合生産制御システムCENTUM VPや安全計装システムProSafe-RSなどのシステム機器が動作している現場においては,サービスパーソンがそれらのシステム機器に接近して携帯電話やスマートフォンを利用する場合が想定される。そこで我々は,NTTコミュニケーションズ社およびNTTドコモ社の協力を得て,無線通信機器の発する電波が当社のシステム機器に与える電磁干渉の影響を調査した。無線通信機器として,最近のスマートフォンに搭載されている第5世代移動通信システム(5G)を対象とした。調査の結果,5Gを想定した周波数や電界強度において,当社のシステム機器に異常は発生しないことが確認できた。


高精度オンライン赤外線式厚さ計WG51S2 (PDF:1011KB/6ページ)

  • 堀越 久美子*1
  • 田口 友也*1
  • 酒井 玲奈*1
  • 西田 和史*1

*1 横河プロダクト本部 P&Wソリューション統括部 技術部

   近年,フィルム・シートは幅広い分野で機能材としての需要が増加しており,食品の小分け包装や電子機器の軽量・薄型化などのニーズを反映して薄膜化の傾向にある。製造工程のフィルム・シートの厚さをオンラインで測定することで,フィルム・シートの厚さの高度な品質管理が可能になる。オンライン厚さ計システムWEBFREX NVの赤外線式厚さ計WG51S2は,フィルム・シート製造工程において,オンラインで高精度に厚さを測定できる。今回,フィルムの薄膜化の傾向に対応した検出器の採用により,高感度な薄膜測定を達成し,赤外線式厚さ計の機能性と安定性を強化し,品質管理性を向上させた。


渦流量計VY シリーズ (PDF:1001KB/4ページ)

  • 船越 智史*1
  • 近藤 颯平*1
  • 胡本 俊亮*1
  • 菅野 真司*1
  • 吉田 森之介*2
  • 岸 敏彦*1

*1 横河プロダクト本部開発統括部流量計部
*2 横河プロダクト本部流量計企画部

   横河電機は,新しい渦流量計VYシリーズを開発した。VYシリーズはトータルサポート力を意味する“Total Insight”を開発コンセプトに採用し,お客様の製品ライフサイクルを総合的にサポートすることを目指している。プラントの安定かつ安全な運用を支援し,将来見込まれるプラント全体のDigital Transformationに対応するために,変換器の進化および診断機能の強化を実現した。本稿では,これらVYシリーズのキーテクノロジーについて紹介する。


蒸気ロス監視を実現するSushi Sensor 無線スチームトラップ監視デバイス (PDF:985KB/4ページ)

  • 酒田 昌幸*1
  • 鈴木 崇之*2
  • 島村 智美*1

*1 横河プロダクト本部コントロールセンターCX事業戦略部
*1 横河プロダクト本部コントロールセンターCX開発部

   蒸気システムにはドレン(排水)を排出するためのスチームトラップが取りつけられることが一般的である。スチームトラップの故障は,従来,巡回監視による聴音や触診等にて検知されていた。しかし,労働人口の減少により産業界全体でその担い手が減っている現在,故障の検知や対処の遅れが原因となったエネルギーロスや生産効率の低下が問題となっている。そこで横河電機は,スチームトラップの技術や知見を持つパートナーベンダとの協業により,スチームトラップの故障と蒸気ロスを監視する無線スチームトラップ監視デバイスを開発した。本稿では,開発したデバイスを利用してエネルギー監視を実現するSushi Sensorの手法を紹介する。


フローリアクターにおける反応温度分布からの反応速度と反応熱の同時評価とその応用 (PDF:1490KB/6ページ)

  • 小川 潤一*1
  • 中村 亮介*2

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター ライフ研究開発部
*2 マーケティング本部 イノベーションセンター DXデザイン部

   フローリアクターでは,反応溶液が流路内を流れながら反応が進行する。ゆえに,定常状態において流路上のある観測点は,常に同じ反応時間が経過した反応点となる。そのため,流路上の任意の複数位置から反応溶液を静的に観測することで,反応に伴う動的変化を測定できる。我々はこの特徴を活かし,反応時の流路内の温度分布を熱流体解析式に基づいて物理モデル化したソフトセンサを開発してきた。本稿では,このソフトセンサで同時に測定される化学反応の活性化自由エネルギー(Δ<i>G</i><sup>‡</sup>)と反応エンタルピー(Δ<i>H</i>)の活用例を示し,反応解析のハイスループット化,および自前のデータの拡充によるマテリアルズ・インフォマティクスへの応用について紹介する。



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