横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

Vol.67 No.1 (2024)

No.1 技術報告 特集

巻頭言 電池開発と車にとってのCO2低減の最新動向(PDF:317KB/2ページ)

  • 石黒 恭生*1

*1 トヨタ自動車株式会社 社友


微小磁場分布計測による模造リチウムイオン電池の検出技術 (PDF:1154KB/6ページ)

  • 塚野 聖仁*1
  • 野口 直記*1
  • 寺尾 美菜子*1
  • 飛田 美和*1
  • 竹中 一馬*1
  • 岡野 隼*2
  • 尾上 由希子*3
  • 大道 馨*2
  • 冨永 由騎*2

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター
*2 株式会社本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所
*3 本田技研工業株式会社 コーポレート戦略本部

   本研究では,リチウムイオン電池から発生する磁束密度を利用して非破壊で模造品を検出する技術を提案する。


電池電極WEB厚さ計ES-5 (PDF:1288KB/6ページ)

  • 清登 明*1

*1 横河プロダクト本部P&Wソリューション統括部

   YOKOGAWAは,1962年にシート製造工程向けのオンライン厚さ計をリリースしてから現在に至るまで,測定や制御の技術を進歩させながら,紙やフィルムなどのシート状製品の品質と生産性の向上に貢献してきた。近年,電気自動車へのシフトに伴い,リチウムイオン電池をはじめとする二次電池製造プラントへの投資が活況となっている。それらのプラントでは,YOKOGAWA製品として,二次電池の部材であるセパレータシートの厚さ測定に用いる厚さ計WEBFREX NVや,電極シートの塗工量測定に用いる厚さ計WEBFREX3ESが広く利用されている。
 二次電池市場が拡大する中,YOKOGAWAは各国法令やInternet of Things(モノのインターネット)化に対応するように,WEBFREX NV用のフレームQC1F16を2023年にリリースし,セパレータシートの厚さ測定に大きく貢献している。さらに,環境負荷低減,安全,効率化など,電極シートの塗工量測定における様々な課題に対応するため,WEBFREX3ESの後継機として電池電極WEB厚さ計ES-5を新たに開発した。本稿では,このES-5について紹介する。


AC/DCスプリットコア電流センサーCT1000S (PDF:1741KB/8ページ)

  • 石田 博之*1
  • 出川 洋之*2
  • 南 裕樹*1

*1 横河計測株式会社 脱炭素ビジネス本部
*2 横河計測株式会社 共通技術・品質保証本部

   センサ部が分割可能なAC/DCスプリットコア電流センサーCT1000Sを開発した。本電流センサは,定格電流が1000 A,使用温度範囲が-40~85°C,振幅確度が測定値の±0.2%なおかつフルスケールの±0.01%(0.1 Hz~100 Hz),周波数帯域がDC~300 kHz(-3 dB)であり,センサ部が分割可能な構造でありながら高精度かつ広帯域に対応した電圧出力タイプの電流センサである。
 本電流センサは,センサ部が分割可能な構造であるため,固定されたケーブルを測定貫通穴に容易に通すことができ,ケーブルを取り外すことができないアプリケーションにおいても電流を測定できる。高い測定再現性を達成するために床に安定して置ける構造とし,さらに,電流センサ本体を固定するためのネジ穴,およびケーブル位置を制限するための導体位置アジャスターを用意した。
 本稿では,AC/DCスプリットコア電流センサーCT1000Sの特徴や,開発にあたって実現した技術について紹介する。


デジタルエンタープライズの実現に向けた次世代統合基幹業務システム構築への取組 (PDF:1207KB/6ページ)

  • 須山 朋也*1

*1 デジタル戦略本部グローバルアプリケーション・データマネジメントセンター 経営システムソリューション部

   横河電機は,2000年以降の海外売上の急増を受け,中期経営構想「One Global Yokogawa」を掲げ,グローバルな経営インフラの統一を進めてきた。2006年4月にはYGS (Yokogawa Global System) プロジェクトを発足し,業務プロセスとシステムの標準化を図り,2008年から約10年かけて制御ビジネス売上の90%を占める拠点にグローバルテンプレートを導入した。その結果,管理作業と運用工数の削減,維持コストの60%削減を達成した。しかし,データ量の増加による処理時間の増加やシステム拡張時の課題も発生した。これに対処するため,デジタル戦略本部はSAPの最新技術S/4HANAを活用し,ビジネスの柔軟性向上とグローバルな業務の標準化・最適化を進めている。この取り組みにより,デジタルバリューチェーンの構築が期待されている。本稿では,このような他社に簡単に真似のできない競争優位性を生み出すデジタルエンタープライズの実現に向けた取組の概要を紹介する。


バイオメタネーションによる二酸化炭素の有効利用 (PDF:687KB/6ページ)

  • 川野 誠*1
  • 池浦 康平*2
  • 寺尾 美菜子*3
  • 木村 浩之*2

*1 マーケティング本部イノベーションセンター プロジェクトデザイン部
*2 静岡大学大学院総合科学技術研究科
*3 マーケティング本部イノベーションセンター センシング研究開発部

   メタネーションは,水素と二酸化炭素から天然ガスの主成分であるメタンを合成する技術である。二酸化炭素は様々な場所で発生する排気ガスに含まれており,排気ガス中から分離・回収した二酸化炭素を原料として利用することで炭素の循環が可能となる。メタネーションはカーボンリサイクル実現に向けた有望な技術と位置付けられており,脱炭素社会実現の柱の一つとなり得るものである。我々は,嫌気性アーキアである水素資化性メタン生成菌の代謝機能を利用してメタンを生成するバイオメタネーションの技術開発に取り組んできた。本稿では,水素資化性メタン生成菌および水素資化性メタン生成菌を含む微生物群集を用いた培養の実験データから得られた知見と,バイオメタネーションシステム構築に向けた今後の研究開発方針について紹介する。


近赤外分光によるフロー合成中の溶媒濃度および水分量の定量的モニタリング(PDF:632KB/6ページ)

  • 服部 祐介*1
  • 鈴木 泰幸*1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター ライフ研究開発部

  非水溶液系の反応では,水分は微量であっても重大な影響を及ぼす可能性があるため厳重な管理が必要である。本研究では,化学合成工程のin-line近赤外スペクトル測定により,合成工程中の溶媒濃度と水分含量の定量的モニタリングを可能にすることを目的とし,in-line測定のためのフローセルの開発,および予測定量のための部分回帰最小二乗法(PLSR)を用いた回帰モデルの構築を行った。耐圧性と流体の置換効率を考慮してマイクロフローセルを開発し,構築した回帰モデルを用いてペプチドのバッチ合成,およびフロー合成工程における各溶媒濃度と水分含量を予測した。各溶媒濃度の予測値は,バッチ合成とフロー合成の両方において理論濃度と良く一致していた。溶媒濃度と水分含量のどちらの予測値の標準偏差も低く,水分含量では10 ppmであった。本研究の結果は,化学合成工程のin-line近赤外スペクトル測定により溶媒濃度と水分含量を予測できること,また,これらの予測を原料や生成物の定量と同時に行うことでin-line分光分析の有用性と価値をさらに高めることができることを示す。


非破壊的かつラベルフリーの細胞イメージングによる未分化マーカー発現量の予測技術 (PDF:831KB/6ページ)

  • 秋吉 竜太郎*1

*1 マーケティング本部 イノベーションセンター ライフ研究開発部

   再生医療等製品の製造では,細胞を破壊せず,微生物による汚染を避けながら培養プロセスと細胞の品質を継続的にモニタリングする必要がある。本研究では,細胞画像から幹細胞の未分化状態を非破壊的にモニタリングする新たな手法,具体的には人工知能モデル用いることで,細胞に物理的に接触することなくOct3/4やNanogなどの未分化マーカーの発現量を予測する手法を開発した。まず,人工多能性幹細胞の画像を明視野顕微鏡で取得し,定量PCRや免疫染色などの破壊的手法で評価されたデータと共に解析した。次に,教師無しおよび半教師ありモデルを構築し,人工多能性幹細胞の画像解析の結果に基づいて未分化状態を正確に予測できることを確認した。このアプローチは,幹細胞研究だけでなく,再生医療等製品のリアルタイムモニタリングや新たな品質管理にも貢献する。



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