100周年記念誌「時代を超えて-Always Reaching Higher-」
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13YOKOGAWA 100th Anniversary並んだ1。半世紀前の1960年代の電力計開発では、国家標準器並みの精度である誤差±0.02%を目標に据える。計測器は当然ながら精度の確認(校正)が必要だが、計測器を校正する機器もまた校正され、その機器も……と連鎖が続く。この連鎖に現実的な終止符を打つのが国家標準器であり、究極かつ頂点に立つ計測器として、業界では「神」とも称される。横河電機が開発した電力計APR-RR2は、海外の権威ある国立標準技術研究所から購入を申し込まれるほどの性能を誇った。以後、技術的変遷はあるものの、高精度電力計は「WT3000E」に引き継がれてハイエンド電力計市場で世界トップのシェアを維持しており、エネルギー利用効率のさらなる向上という時代の要請によって再び脚光を浴びる存在となりつつある。測定精度において頂点を極めるとの志は、常に測定原理にさかのぼって研究開発を進める風土としても定着している。物理的な物質やエネルギーを測るには、対象へ働きかけ、その反応をとらえることが不可欠である。どうしたら対象物を最も正確、精緻に測ることができるかから考える――電力、圧力、温度、流量などさまざまな計測分野の研究開発や装置製造で、この姿勢はYOKOGAWAでは徹底というよりむしろ、当然のこととして実践される。言い換えれば、測定対象との接点を決して手放さない――測定信号・情報のデジタル化による効率的処理・分析だけでなく、信号や情報をつかまえるアナログ部分を技術の根底にもつというYOKOGAWAの強みともなっている。差圧・圧力伝送器「DPharp」は、この原理原則からのアプローチによって開発された世界初の原理に基づく画期的な製品である。人の髪の毛より細く小さなパッケージに弦(振動子)を張り、そこにかかる圧力による弦の振動数の変化を電気信号に変えて数値化する――これが測定の原理であり、弦をシリコンの単結晶で作ることで感度大河内記念技術賞を受賞した共焦点スキャナユニット(写真は最新機種のCSU-W1)世界初の原理に基づく画期的製品差圧・圧力伝送器「DPharp」シリコンレゾナントセンサの断面を上げる一方、弦を張る空間を真空にすることで温度などの環境変化の影響を低減し、精度と安定性(15年間で変動は±0.02%)を極限まで高めた。この結果、定期的なゼロ点調整の必要が無くなりゼロ点調整用バルブが不要となったことによる計装コストの削減、定期校正周期の延長によるメンテナンスコスト削減、一機種で幅広い圧力範囲が測定可能となったことによる保守在庫品の削減など、お客様のプラントのトータルコストの大幅削減を実現した。弦の真空封入など、微細な機構を作り上げるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術もYOKOGAWAの大きな武器なのである。 大河内記念技術賞を受賞した共焦点スキャナユニットは、生きた細胞の動きを1,000分の1秒単位で連続的に捉えて記録するという難問を、YOKOGAWAの得意分野のひとつである光応用計測とメカトロニクスの技術をもってクリアしたものである。2万個に及ぶピンホールが開いたディスクを通してレーザーを照射することによる超短時間での画像取得と、ピンホールそれぞれにマイクロレンズをつけて画像を明るくするという発想を具体化させた。これにより、生きた細胞や細胞内小器官のダイナミックな動きを捉えられるようになり、生物の基礎研究“そこにあるもの”の測定を常に「原理原則」から1 1918~19年頃、逓信省で丹羽保次郎(日本初の長距離無線写真電送の実験に成功、初代・東京電機大学学長、文化勲章受章)から英国製計器の国産化をもちかけられた青木晋はこれに応えた。「1年の後には、外国品にまさる立派なものを試作して、われわれを喜ばせてくれた。当時は、このような精密機械を日本でつくりうるなどとは思いもおよばない時代だったし、しかも多くの需要を望みうるわけでもなかったのに、青木さんは敢然と引き受けられ、いろいろと研究のすえ成功された。」(丹羽氏の回顧談)

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