概要
製糖工場の炭酸飽充塔で使用する pH 計は、製品の高品質化と歩留まりをよくするために正確な測定値が要求されます。しかしながら、測定対象の温度が高いうえ糖液に添加する石灰や炭酸ガスによって生成する炭酸石灰などがスケールとして検出器部に付着しやすく、これが安定な測定を妨げます。したがって、塩酸による洗浄でスケールを落とすとともに低下した検出器特性の回復を図ることを、短い周期で実施することが必要です。
このようなアプリケーションには、汚れに強い液絡部を有しているポリマー電解質検出器の使用が最適であり、酸洗浄に対する効果も大きく、寿命も一般用検出器に比べて数倍以上の長さを示します。
お客様の期待
- 製糖工場の炭酸飽充塔の効率を上げたい
- 汚れの激しい場所で pH を測定したい
- ランニングコストを削減したい
- 設備更新のイニシャルコストはミニマムに抑えたい
プロセス概略
砂糖の脱色精製は、石灰乳を添加した糖液に炭酸ガスを吹き込み、石灰を炭酸石灰として沈殿させることによって行なわれます。この工程において pH 計は、炭酸飽充槽内での pH 管理に使用されます。
pH 管理は高品質の製品を得るため正確さが要求されます。したがって、長期間にわたり安定な測定値を示す pH 計が望まれますが、一般の pH 検出器を用いた場合には、測定液の温度が高く検出器特性の劣化が早いこと、検出器へのスケール付着が著しいことなどの要因がこれを困難にします。許容範囲内の誤差で運転するには、酸洗浄や校正を頻繁に行なわねばならないうえ短期間での検出器交換も必要となり、運転コストがかさみます。
ポリマー電解質検出器を採用することにより、一般の検出器を用いた場合より大幅に運転コストを低減することができます。
YOKOGAWA のソリューション
フィールドデータ
プロセス条件および電極の状態
測定点(図参照) | プロセス条件 | 検出器の保守と寿命 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
測定対象のpH 値 | 酸洗浄周期* | 寿命 | ||||
一般用検出器 | ポリマー電解質検出器 | 一般用検出器 | ポリマー電解質検出器 | |||
#1 飽充塔 | pH10 前後 | 8 ~ 10 h | 8 ~ 10 h(48 h > ) | 約 1 か月 | 約 6 か月< | |
#2 飽充塔 | pH9 前後 | |||||
#3 飽充塔 | pH8 前後 |
*:0.2pH 以内の誤差が維持される範囲。
(注)酸洗浄には、3 ~ 5% の希塩酸を使用。
測定システム
- 適合システム
(1) 4 線式 pH 計システム
(2) 2 線式 pH 計システム
(3) 薬液洗浄形 pH 計システム
- 構成機器
ポリマー電解質検出器
PH4P-120-□□ - G-N/PP(システム 1 の場合)
PH4P-120-□□ - F-N/PP(システム 2 の場合)
PH4P-120-□□ - □-N/PP(システム 3 の場合)
潜漬形ホルダ(システム 1,2 の場合 )
PH8HS-PP- □□ -T-NN-NN * A
pH 変換器(システム 1 の場合)
FLXA402-A-B-AJ-P1-NN-A2-WR
pH 変換器(システム 3 の場合)
FLXA402-A-B-AJ-P1-NN-A2-WR
FLXA21-D-P-D-AB-P1-NN-A-N-LA-J-NN
FLXA202-D-B-D-AB-P1-NN-A-N-LA-J-NN
pH 伝送器(システム 2 の場合)
FLXA202-D-BーD-AB-P1-NN-A-N-LA-J-NN
FLXA21-D-P-S-AA-P1-NN-A-N-LA-J
ディストリビュータ(システム 2 の場合)
PH201G-A1 *C
薬液洗浄装置(システム 3 の場合)
(特注内容:温水洗浄付き)
ホルダ
PH8HS3-PP- □□ - □ -YP*C
操作ユニット
PH8SM3- □ -TT2- □□ - □□ - □□□ *C/Z
ユーティリティ
- 電源
FLXA402 用電源
90 ~ 264V AC,50/60 Hz 消費電力:約 35 VA
FLXA202/FLXA21 用電源(PH201G ディストリビュータから給電)
16 ~ 40V DC(負荷抵抗により異なります)
PH201G 電源:100V AC,50/60 Hz
PH8SM3 用電源(薬液洗浄形の場合)
100 ± 10V AC,50/60 Hz(± 5%)消費電力:約 60 VA - 空気(システム3 の場合)
圧力:300 ~ 950 kPa
消費量:約 10 Nl/min - 洗浄水(システム3 の場合)
圧力:200 ~ 300 kPa
消費量:洗浄時;約 200 ml - 洗浄用温水(システム3 の場合)
圧力:200 ~ 300 kPa
消費量:洗浄時;約 10 l/min
留意点
- PH4Pポリマー電解質検出器には、測温体は内蔵していません。通常、測温体内蔵の PH4PT は、測温体保護管が腐蝕する恐れがある場合に用います。
業種
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化学品製造の新しい“あたりまえ”を創出する DX ~ ワークキングスタイル変革の実践 ~
私たちの暮らしと日本のものづくりを支える化学産業。石油化学、機能性化学、ライフサイエンスなど分野も広く、製造現場が抱える課題や解決方法は多様化しています。「人」を中心として化学品製造業を取り巻く環境も大きく変わりつつある今、YOKOGAWA はDigital Transformation (DX) により実現される「新しい働き方」についてお客様と共有し、共にプラントの価値最大化を目指します。
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食品
食品製造業の皆様は、「食の安心・安全の確保」と「コストダウン」の両立といった従来の課題に加え、感染症や省力化への対応などに取り組まれていることと思います。
YOKOGAWAは、お客様が抱える課題に寄り添い、お客様の運用に適した工場のあるべき姿をご提案していくことで、働きやすい現場づくりを支援いたします。
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