概要
石油精製プラントの減圧蒸留装置における安全監視用に、炭化水素蒸気中の酸素濃度測定が行われています。従来の磁気式酸素計は、サンプリングして前処理をし測定するため、応答が遅く、安全システム上非常にクリティカルな課題となっています。さらに、サンプリング装置の保守やランニングコストに問題も多く、例えば、測定ガス中に含有する高濃度H2Sは、サンプリング装置や分析計の早期腐食を引き起こします。別の問題として、サンプリング装置内での結露や、前処理は測定成分の体積濃度を変えてしまい、実際のプロセス中のサンプル状態と異なってしまいます。TDLS8000 レーザガス分析計はこれらの問題を解決します。
お客様の期待
- サンプリング装置メンテナンスコスト、ランニングコストの削減
- 高速応答での安全システムを実現
- 連続監視、高精度 O2 濃度の監視
プロセス概略
減圧蒸留装置は常圧蒸留装置からの残油を大気圧より低い圧力下で蒸留分離する装置です。蒸留は絶対圧力 2 ~ 15kPa、温度 370 ~ 380℃の条件下で、炭化水素の分解が起きないように操業されます。この減圧下では大気吸い込みによる酸素の含有が爆発につながる恐れがあるため、酸素濃度の管理が重要です。通常、酸素濃度は 2 ~ 5%に設定され、不活性ガスで蒸気をパージするように操業されます。このため、酸素濃度測定には高速応答と高信頼性が求められます。
優位性
- 従来の磁気式酸素濃度計との比較
磁気式酸素濃度計はインライン測定ができないため、真空に近い減圧下から真空ポンプで測定ガスをサンプリングする必要あり、実現が困難な場合もあります。また、外気のリークも発生することも有り、測定の信頼性に問題があります。
TDLS8000 はサンプリングせず、蒸留ラインで酸素濃度を直接測定できます。レーザ光がプロセス内を透過するだけで、高速で信頼性が高く、保守も容易になります。 - 他のレーザ式ガス分析計との比較
2f 法を採用したレーザ式ガス分析計では、減圧により酸素の吸収スペクトルが非常に鋭いピーク形状に変化するため、正確な測定が困難です。一方、TDLS8000 はスペクトル面積法を採用しており、原理的にスペクトル面積がリニアに圧力に比例するため容易に圧力補正ができ、減圧下でも正確な測定ができます。次頁に圧力変化テストデータ(TDLS 測定結果)を示します。
YOKOGAWA のソリューション
測定システム
- TDLS本体(O2計)
TDLS8000-☐☐-X1-☐☐-A1-J-N/Z
/Z: 超低圧力 - 絶縁フランジ
IF8000-☐☐-☐☐-☐☐-12-N
(注)測定ガス圧仕様のフランジを選択します。
減圧蒸留塔の O2 測定点
圧力変化テストデータ
下のグラフは測定ガスの酸素濃度を 21%->4%->0.8% に変化させ、更に絶対圧を 100kPa から 20kPa まで変化させた時の測定結果です。
測定値は圧力変化の影響を受けず、安定して正確に酸素濃度を測定しています。
圧力 100kPa abs. ~ 20kPa abs. での酸素濃度測定値
業種
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