はじめに
動物細胞では、アクチンフィラメントが束状と網目状の2種類の繊維状構造(細胞骨格)を作っており、細胞内小器官の配置、細胞膜などの形態維持や、細胞分裂、筋収縮、繊毛運動などの際に起こる細胞自身の変形を伴う細胞の運動時の力の発生など、細胞骨格は大変重要な役割を果たしています。細胞内では細胞骨格に付随する非常に多くのタンパク質が各繊維の分布や動的ふるまいを調節しているため、薬剤など刺激により細胞骨格繊維の数、長さ、分布、動態、安定性など顕著な変化が現れます。ここではマイクロフィラメントの構成タンパク質のひとつであるアクチンを染色し、Morphology Analysis を用いた細胞骨格による形態変化の解析について紹介します。
図1. MRC5 細胞の細胞骨格の認識<実験1の結果>
原画像をA-1およびB-1で、その認識画像をA-2およびB-2で示しました。
図2. A10 細胞のアポトーシスによる細胞の形態変化<実験2の結果>
(1) 原画像と解析画像
Staurosporine(0μM)の原画像(a)と解析画像(c)、Staurosporine(10μM)の原画像(b)と解析画像(d)
左:(2) 細胞骨格の総本数
右:(3) 細胞骨格長の平均値とそのばらつき
(4) 細胞骨格長の分布
(5)細胞骨格の方向性
水平方向を角度0度として、認識された骨格の方向性を示しました。
実験
実験1
- MRC5細胞を96ウェルプレートに20,000cells/wellで播種し一昼夜培養後、ホルムアルデヒドにより固定し、染色(アクチン:phalloidin)
実験2
- A10細胞を96ウェルプレートに10,000 cells/wellで播種し一昼夜培養後、Staurosporine(0~10 μ M、2 時間)を添加し、細胞にアポトーシスを誘導
- ホルムアルデヒドにより固定し、染色(アクチン:phalloidin)
以下の実験は共通:
- CellVoyager で画像を下記条件で取得:
- 対物レンズ: 40倍
- 1well あたりの取得画像数:1枚
- 露光時間(Alexa488:800 msec)
- Morphology Analysis を用いて解析
- 原画像から細胞骨格領域を抽出
- 抽出した個々の細胞骨格に対し各種特徴量を測定
結果とまとめ
「Morphology Analysis」を使用して、MRC5 細胞にアポトーシスを誘導した際の細胞骨格の変化を解析しました。その結果、アクチンフィラメントの数や、長さ別の分布などのデータにおいて、コントロールと比較して有意な差を認めることができました(図2)。
細胞骨格の構造変化は、細胞の遊走時にも観察されるため、「Morphology Analysis」はガン転移や炎症反応といった研究領域での利用も考えられます。
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