はじめに
GPCR は7回膜貫通部位を持つ受容体で、細胞表面に多種多様に存在します。その機能は細胞外から細胞内への情報伝達で、受容体にホルモンや神経伝達物質などの特異的なリガンドが結合したときに、G タンパク質を介し多様な細胞機能を調節します。医薬品の多くはGPCR をターゲットとしており、新規GPCR 作用物質には多彩な生理活性が期待され、GPCR は創薬での最も重要なターゲットの一つです。GPCR にリガンドが長期にわたり結合すると、ベシクルとして細胞膜から細胞質中に引き込まれエンドソームを形成し、neurokinin-1 受容体(NK1R) では脱感作が生じます(インターナリゼーション)。この「顆粒解析」を用いると、インターナリゼーションの解析を行うことができます。
図1.CellVoyager を用いて取得した画像イメージ
(a)Substance P 未刺激の原画像
(b)Substance P(1μM)刺激の原画像
(c)画像(a)の拡大図
(d)画像(b)の拡大図
(e)画像(a)の画像処理結果
(f)画像(b)の画像処理結果
すべての画像はHoechst33342(核)とAlexa488(NK1R)で得られた画像を重ね合わせたもの
図2.Substance P の濃度とNK1R インターナリゼーション
(a)「1細胞あたりの顆粒数」の用量応答曲線
(b)「1細胞あたりの顆粒の総面積」の用量応答曲線
実験内容
- NK1R を過剰発現させた安定発現株(COS7)を96 ウェルプレートに10,000 cells/wellで播種し一昼夜培養後、Substance P(0~1μM)を20分間添加
- ホルムアルデヒドにより固定し、染色(NK1R:Alexa488、核:Hoechst33342)
- CellVoyager で画像を下記条件で取得:
•対物レンズ:40 倍
•1well あたりの取得画像数:9
•Z slice:15 step(1μm間隔)
•露光時間(Alexa488:800msec、Hoechst33342:300msec) - 顆粒解析」を用いて下記の条件で解析
•核画像から核領域を抽出、NK1R 画像から細胞質領域、顆粒領域を抽出
•抽出した核領域と細胞質領域および顆粒領域を対応付け
結果とまとめ
CellVoyager で画像を取得し、「顆粒解析」を使用して解析を行った結果、Substance Pの濃度に依存したNK1R のインターナリゼーションを数値化することができました(図2)。「顆粒解析」では、インターナリゼーションにより生じた顆粒の情報(数、面積、輝度)、細胞の情報(位置、面積)など多用な数値データが算出されるため、多角的な考察が可能となります。「顆粒解析」を用いた解析により、GPCR に作用する様々な化合物の発見が期待されます。
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