はじめに
近年、iPS細胞やES細胞の分化誘導や初代培養細胞など、長時間培養が必要な細胞の取り扱いが増えています。一週間から数週間以上の長期にわたって培養を行う際、培養状況の確認のため定期的に細胞を顕微鏡観察するといった作業が必要ですが、それには人手も時間も多くかかり、実験を遂行する上での一つの障害ともなっています。
そのため、細胞培養からプレート搬送、画像撮影および解析までを統合したシステムを構築し、長期間培養時の連続観察を自動化することで、実験者の負担を減らしつつ細胞の状態を継続的にモニターすることが可能となります。また、培養中の細胞の状態を画像として記録しておくことは、培養コンディションは適切に維持されていたか、あるいは何らかのイベントがどの時点で発生したのかといったことを事後的に検証する上でも有用です。
ここでは、限界希釈法により単一クローン性の細胞集団を単離する場合を想定し、ストッカーシステムとCellVoyager CQ1、および画像解析ソフトウェアCellPathfinderによって構成した連続培養・自動撮影システムによる長期間の経時的培養モニタリングを行っています。
実験手順
- 96穴ウェルプレート(Greiner #655090)にGFPを発現した293(HEK)を限界希釈法にて播種
- プレートをインキュベータ付き自動搬送機に搬入し、12時間間隔で8日間観察
- 解析ソフトウェアを用いて細胞面積を数値化
撮影条件
- 倍率:4倍 Dry
- 波長:488nm、明視野
- 1ウェルあたりの撮影視野数:4視野
- ライブセル撮影:12時間間隔で8日間
結果
本アプリケーションでは、CQ1とインキュベータ付きカロ―セル型ストッカー、CellPathfinderを組み合わせることで、シングルセルがコロニーを形成する過程を長時間連続的に自動で観察する事ができました。
また、観察時以外はプレートをインキュベータに戻す事で、イメージャーを長時間占有する事なく長時間ライブセル実験を行うことができました。
左:コロニー形成のタイムラプス
右:時間経過による細胞エリアの倍率変化
CellPathfinderにて検出した細胞領域のエリア:上はDay0、下はDay8。Day0は0%から100%でグラデーション。Day8は0%から50%の間で白から赤までグラデーションしている(50%以上は全部赤)。
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