横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

グリーン水素製造における電解槽運用の効率化

カーボンニュートラルで注目される次世代水素製造プロセス

現在の水素製造における産業プロセスには水蒸気改質法が広く使われています。水蒸気改質法は大量の水素を効率的かつ低コストで生産できる反面、原料や燃料として化石燃料を使用するためCO2が排出される課題があります。

一方、近年では再生可能エネルギーを使用した水の電気分解による「グリーン水素」の製造がカーボンニュートラルを実現する方法の一つとして注目されています。

この製造プロセスは複数の装置で構成されていますが、その中核となるのが電解槽です。

水電解プラントイメージ
水素製造プロセスの一例

 

グリーン水素を作る電解槽の仕組み

水電解装置にはいくつかの種類がありますが、代表的なものに、アルカリ水電解装置(AWE)やプロトン交換膜型水電解装置(PEM)があります。いずれの方式でもセルと呼ばれる構成要素に電流を印加することで電解反応を起こし、水素ガスを発生させます。
セルは電極(陽極、陰極)と膜、バイポーラプレートや隔壁で構成されており、セルに電解液を流し、電極に電流を印加することで電解を行います。

AWE water electrolysis cell

PEM water electrolysis cell

電解槽ではこのセルを幾層にも積み重ねて電流を印加することで、効率的に多くの水素を製造します。

電解槽

 

水素生産量の最大化と消費電力削減のために

セル電圧測定(CVM)で電解槽の効率化を実現するSMARTDAC+

電気分解による水素製造では多くの電力を使用し、運用コストの大部分を電力費用が占めます。そのため、消費電力の削減は非常に重要な課題です。水素の製造を効率よく行いながら消費電力を削減するためには、セルの電力効率を十分引き出す必要があるため、セルへの供給電力を適切に管理し、定期的にセルのメンテナンスを行うことが必要不可欠です。その手法として、セルの電圧測定(Cell Voltage Monitoring、以下CVMと呼ぶ)があります。各セルの電圧傾向からセルの状態を把握することで、効率的な運用とトラブル防止に役立ちます。

SMARTDAC+シリーズのデータアクイジションシステムGMデータロギングソフトウェアGA10は、CVMを実現するための最適なシステムを提供します。GMは、簡単に必要なモジュールを組み合わせることができるブロック構造を採用した、汎用性と拡張性、メンテナンス性に優れたデータロガーです。GA10はPCベースのデータ収集ソフトウェアで、収集したデータのモニタと加工を容易に実現します。必要なデータのみを加工して上位システムへ送ることで、効率的なデータ管理を可能にします。

SMARTDAC+ CVMシステム

SMARTDAC+ CVMシステム

 

CVMシステムにおけるSMARTDAC+の4つの特長

Data Logging
正確なデータ測定

  • 多チャネル
  • 高耐圧
  • 高精度

Reliability
データの信頼性を担保

  • 優れたノイズ耐性
  • データ冗長性

Data monitoring & processing
簡単で効率的なモニタリング
価値あるデータに変換

  • 容易な画面作成
  • データ加工

connect
豊富なネットワーク対応

  • OPC-UA
  • Modbus/TCP
  • Modbus/RTU
  • PROFINET ....etc.


Data Logging

電解槽のセル電圧を高精度に収集

GM10は電解槽からのデータを正確に収集します。

GM10

GM10

CVMでは多チャネルの電圧を測定することが必要ですが、GM10と拡張モジュールGX90EXを使用することで、最大420chのセル電圧を同時に測定することが可能です。

電解セル一つ一つの電圧は小さいですが、多数のセルをスタックするため、電解スタックにかかる電圧は非常に大きくなります。これを安全に測定するためには、高耐圧測定に対応した機器が必要になります。高耐圧アナログ入力モジュールGX90XA-10-V1は1000Vの基礎絶縁(二重絶縁:600V)性能を持ち、高いコモンモード電圧が生じるCVMに適しています。

GX90XA

GM10はセルの微小な電圧変化を正確に記録します。
実力値として±(0.01% of rdg +2mV)*の測定確度を持っています。また、ディジタルデータの表示分解能も100μV(±2Vレンジの場合)、100mV(±6Vレンジの場合)と高分解能なデータ測定が可能です。

* 6Vレンジにおける、製造集荷時の確度検査データから算出した値です。

 

Reliability

電解槽のデータの信頼性をサポート

GM10は電解槽からの収集データの信頼性を向上させます。

GMシリーズはノイズ耐性に優れており、様々なお客様に長年採用されています。電解槽のように大電流を扱う過酷なノイズ環境下でも安定して正確に測定データを収集することが可能で、電解槽を使った苛性ソーダの生産現場でも多くの実績があります。

多業種に採用

GM10はデータロガーとして、データを現場で保存します。ネットワーク障害や通信エラーなどで上位システムでのモニタリングが中断された場合でも、GM10には測定データがファイルとして保持されます。

測定データの保存領域として、GM10の内部メモリに加え、1~32GBのSDカード(SD/SDHC)が使用可能です。測定データは常に内部メモリに記録されますが、定期的に外部メディア(SDカード)にも自動転送されます。これにより、長期間*に渡り多チャネルの測定データを確実に保存します。
* 32GBのSDカードを使用して、500チャネルデータを5秒周期で記録した場合、およそ1年4カ月間のデータが保存可能(500ch: 測定チャネル420ch、通信チャネル80ch)

測定データ

GM10を使用することで、リモートIOでは実現できないデータの信頼性を担保します。

 

Data monitoring & processing

電解槽のセル電圧を効率的にモニタリング

GA10を使うと、電解槽のセル電圧を簡単かつ効率的にモニタすることができます。

GA10は最大100台の機器と接続でき、最大10,000点のタグデータを扱います。これらのデータをモニタリングするためのプログラム作成や複雑な設定は不要です。GA10に機器を接続すると、GA10は機器を自動で検出し、使用する機器を登録するだけでモニタリングを開始できます。

また、お客様のシステムに合わせて専用の画面でモニタリングすることも可能です。
GA10にはSCADAシステムのように、ディジタル表示やトレンド表示などの様々な部品が用意されており、それらを配置することによって、お客様専用のモニタリング画面を容易に構築できます。

電解槽のセル電圧を効率的にモニタリング

 

電解槽のセル電圧測定値を価値あるデータに変換

GA10は電解槽のセル電圧データを演算機能により加工することができます。

GM10で収集したセル電圧データを使って、任意のセルの移動平均値やセルスタック全体の平均電圧など、電解槽の運用に有意なデータへ加工することができます。また、データを加工してからDCSなどの上位システムに必要なデータのみを送信することで、効率的なシステム構築が可能になります。

電解槽のセル電圧測定値を価値あるデータに変換

 

Connect

豊富なネットワーク機能で自在なシステム構成

GM10とGA10の豊富なネットワーク機能によって、お客様システム全体のデータを容易に共有、モニタリングすることが可能です。

GM10とGA10は様々な通信プロトコルに対応しています。PLCなどのコントローラやフィールド機器などの下位デバイス、DCSやSCADAなどの上位システムと通信することにより、柔軟なネットワークを構築できます。

豊富なネットワーク機能で自在なシステム構成

 

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