横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

Sushi Sensorで技術伝承 / データで課題を解決し、 ナレッジを共有・蓄積する扇島LNG基地様

東京ガス株式会社 扇島LNG基地 様 logo
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概要

東京に本社を置く東京ガス株式会社は、都市ガスの製造・販売、液化天然ガス(LNG)の販売、発電および電気の供給・販売などを行うエネルギー企業です。同社は4つのLNG基地と、環状の大規模ガスパイプライン、および広域にわたるガス供給網を有し、首都圏を中心とした一都六県に都市ガスを安定供給しています。

同社のLNG基地の一つ、扇島LNG基地は、312,245m2の敷地内に、4基の地下式LNGタンクや11基のオープンラック式気化器を持つ最新鋭のLNG基地です。コンパクトでありながら、高効率に都市ガスを製造し、首都圏エリアや近隣のコンビナートなどに供給しています。

LNG基地のはたらき
LNG基地のはたらき

扇島LNG基地では、YOKOGAWAの産業用IoT向け無線ソリューション Sushi Sensorを積極的に活用しています。設備の状態をタイムリーに把握しながら、日常の巡回点検を効率化したり、気になる箇所をすぐに測って改善したりするなど、メンバー同士でデータを見ながら知恵を出し合い、活発に活動しています。

 

お客様の課題とソリューション

お客様のチャレンジ

ガスの安定供給は、社会産業のインフラを担う非常に重要なものです。扇島LNG基地では安全第一かつ安定操業を目指し、日々設備保全や改善活動に取り組んでいます。そのための施策の一つがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

扇島LNG基地では、安定操業をより確かなものにするため、圧力、振動、温度を測定するSushi Sensorを導入し、あらゆるところをリアルタイムに監視しながら、保全活動などに役立てています。Sushi Sensorが測定したリアルタイムおよび過去のデータは、ダッシュボード画面を用いて複数メンバーが同時に見ることができます。さらに、データはノウハウの共有、技術伝承にも活用されています。

プラント内のさまざまな設備に取り付けられるSushi Sensor
プラント内のさまざまな設備に取り付けられるSushi Sensor

 

日常の巡回点検の効率化

扇島LNG基地では、日々の巡回点検をSushi Sensorで効率化しています。
基地ではプロセスガスクロマトグラフでガスの成分分析を行っていますが、その分析に用いるキャリアガス(ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなど)のボンベの減り具合を、圧力Sushi Sensorを用いてリアルタイムに測定しています。
従来は毎日3回行っている巡回点検の際に、フィールドオペレータがボンベの残圧を読み取り、タブレットを用いてその値を入力していましたが、Sushi Sensorによってその手間は必要なくなりました。フィールドオペレータはボンベの漏れや周辺の状態の点検に集中し、効率的な巡回点検ができるようになりました。

リアルタイムで測定されているボンベの残圧は、ダッシュボード画面にてグラフで確認することができます。ボンベの残量が少なくなると、表示が赤く変わり、ボンベの交換時期を知らせます。
あるとき、いつもよりガスの減りが早いことに気付いたメンバーの指摘により、ボンベのバルブの締め付けが甘かったことが分かりました。その違いに容易に気付けたのは、グラフを普段から見て、通常はどのようなカーブで圧力が下がっていくのかを把握し、知見を持っていたからにほかなりません。

ガスボンベに取り付けられた圧力Sushi Sensor
ガスボンベに取り付けられた圧力Sushi Sensor

 

大規模工事後の配管クールダウンの温度測定

扇島LNG基地では、温度Sushi Sensorも活用しています。

熱電対と補償導線によるLNGラインの温度測定
大規模工事の復旧時には、常温状態になっている設備に約-160℃のLNGを通してガスの製造を再開しますが、この際LNGの配管を急激に冷やし過ぎると、配管が曲がったり破損したりしてしまうおそれがあります。これまでは、設備のクールダウンの状態を監視するために、何十本もの熱電対に補償導線を取り付け、その配線を基地内の現場に仮設設置した監視用集録機に引き込んで測定器につなぎ、人の目で監視していました。

これまでの課題:

  • タンクや気化器などさまざまな設備から、監視用集録機までの長い距離に補償導線を敷設するため、工事期間やコストがかかる。
  • クールダウン中は、夜間も含め現場に人が常駐し、監視していなければならない。
  • 過去の温度データを見る場合は、現場に行ってMS-Excelファイルに抽出しなければならない。
  • これらの作業は、過去約25年で何回か行われている。

Sushi Sensorによるリアルタイム温度監視
2024年に行われたクールダウンでは、この補償導線をやめ、替わりにSushi Sensorを使うことになりました。十数カ所の測定地点に温度Sushi Sensorを設置し、データは管理棟屋上に取り付けたゲートウェイを介して収集。ダッシュボード画面を用いて、クールダウンの様子やその進み具合を監視できるようにしました。リアルタイムのデータを、誰でも見ることができるので、たとえばバルブの操作量がどのように温度変化に影響するかなど、メンバー同士でノウハウを共有しながら、安全かつ効率的に作業を進めることができました。

また、基地では次回のクールダウン実施時に、今回のデータをベストプラクティスとして参考にしながら運転することを検討しています。

Sushi Sensor導入のメリット:

  • 長距離の実配線工事、監視用集録機設置などの作業が不要。工期短縮および大幅コストダウン。
  • リアルタイムデータを複数人で同時に見ることができる。
  • 蓄積したデータをノウハウ共有、教育のために活用できる。

 

さまざまな課題を次々と測って解決

基地ではSushi Sensorを活用して、設備の気になる点、改善すべき点をデータで見える化し、次々と改善活動を進めています。

部品のゆるみや劣化の要因を見極める
日常の点検のなかで、スプリングワッシャーがへたりやすかったり、装置の内部部品がゆるんだりする箇所があるたびに、振動Sushi Sensorを取り付け、振動値やその傾向を確認。振動が大きいと認められた箇所に振動対策を施したり、部品交換周期の見直しを行ったりと、さまざまな対策を実施しています。
これらの振動対策については、対策前後の振動の様子がセンサによって明確に把握できるというメリットもあります。また、蓄積したデータから、装置が現在どのような状態なのかを推定できるようになるなど、新たなナレッジの獲得にもつながっています。

ポンプの振動を監視する振動Sushi Sensor
ポンプの振動を監視する振動Sushi Sensor

現場指示式圧力ゲージの常時監視でポンプ性能を把握
ポンプの性能を把握するために吐出圧を測定することは有効ですが、現場にはDCSに信号を取り込んでいない現場指示計のみの圧力ゲージがいくつもあります。基地ではそれらのポンプに圧力Sushi Sensorを取り付け、圧力データを定周期で監視することにしました。これにより、ポンプの性能監視が常時行えるようなり、性能低下を早期に検出できるようになりました。
また、振動Sushi Sensorを合わせて取り付けることで、振動が発生した際にポンプの性能が低下しているかどうかを確認したり、故障の予兆をとらえて早期に点検整備を行えるようにしました。

温度常時監視で設備腐食の発生環境を監視
設備の一部には、温度の影響で腐食が生じやすい箇所があります。腐食はさまざまな要因が絡み合って起こりますが、たとえば運転温度が間欠的に変動することもその一因と言われています。そこで基地では温度Sushi Sensorを取り付け、通常運転時および設備停止時などの温度変化を常時監視することにしました。これにより、腐食につながる発生環境を監視できるようになりました。温度変化の傾向把握は新たなナレッジとなり、保全計画の見直しに活用されるほか、将来的には故障の事前検知につながることが期待されています。

温度Sushi Sensorの継続使用
定常運転になった現在、クールダウン中に取り付けられていた温度Sushi Sensorのいくつかは取り外されましたが、今でも配管の複数箇所での温度測定が続けられています。配管に巻かれている保冷材を剥いで熱電対のプローブを取り付け、温度Sushi Sensorが温度を測定し、データ送信を行っています。 このように必要なところに必要なときに取り付けられるのも、Sushi Sensorのメリットの一つです。

配管の温度を常時監視する温度Sushi Sensor
配管の温度を常時監視する温度Sushi Sensor

 

お客様の声

Q. 巡回点検について

「巡回点検は毎日行っています。朝、昼、夜の3回行い、1回にかかる時間は1時間から1時間半程度です。その3回でプラント全体を点検する、というのを毎日行っています。雨の日も風の日ももちろん点検に行きます。」

「キャリアガスのボンベの圧力がオンラインで見られるのはとても良いです。これまではボンベの監視を現場で行っていました。毎日の巡回点検のなかで残圧を確認し、記録していました。ボンベは10本以上あり、かつ設置場所がいくつかに分かれています。」

「ボンベの残圧を手で記録しなくて済むのが良いです。その工数も削減できますし、入力ミスをしないよう気を使う必要もありません。過去のデータも含めて残圧をグラフで確認できるので、いつ頃交換時期となるのかも容易に分かるようになりました。」

Q. クールダウン中の温度監視について

「クールダウン中の温度監視をSushi Sensorにしたことで、工期、工数、コストともに大幅に削減することができました。なによりクールダウン中は誰かがずっと監視用集録機の置かれたテントにいなければなりませんでしたが、今ではダッシュボード画面でどこにいても温度を監視することができます。今回は13点の温度Sushi Sensorを使用しました。欲しいところにすぐに付けられるというのが良い点です。」

「データを皆で見られるというのが大きいです。設備によっては一方を冷やすと逆側の温度が上がるなど、独特のバランスがあります。そのような設備の挙動や特性について、関係者全員でリアルタイムのデータや過去のデータを見ながら、ノウハウを出し合うことができるようになりました。『こう操作したからうまくいった』、『うまくいかなかった』などと話し合ったり、先輩からアドバイスをもらったりして、設備の変化にスピーディに対応することができます。」

「プラントを俯瞰した画面を作って、そこにSushi Sensorのデータを表示するようにしました。クールダウン中にプラントを全体的に見られ、把握できるというのは、とても良かったです。新しいナレッジにもつながりました。」

Q. ノウハウの共有や技術伝承について

「技術伝承は当社でも課題です。昔の人は見て覚えろ、触って温度を確かめろという感じでしたね。でも今はデータがあり、それをベースにノウハウの共有ができるようになりました。」

「Sushi Sensorでデータを取ったことで、バルブをどのぐらい操作すると、この温度になる、というような情報を得ることができるようになりました。前回まではデータもデジタルで残っていませんでした。現在実績をまとめているところですが、今回のデータを参考にすれば、次回のクールダウン作業も安全かつ効率的に行えると考えています。次回はまた数年後の実施となりますので、人の記憶だけではなかなかノウハウを活かすというのは難しいです。でも、データとSushi Sensorがあれば、次もテント無しでクールダウンができます。」

Q. Sushi Sensorの良い点について

「Sushi Sensorは気になるところにぽんぽん付けられるのがすごく良いです。実際はぽんぽんというわけにはいきませんが、大掛かりな工事をしなくても付けられます。スピード感があります。」

「トラブルがあったときにすぐに調べることができます。DCSに伝送器を追加するとなると、まず予算立てするところから始まりますが、Sushi Sensorは必要なところに自分たちですぐに付けられます。もちろんDCSにつないで定量的に見るべき値もありますので、両者を使い分けながら活用しています。」

「これまで見ていなかった箇所のデータが見られるようになったというのは、劇的な変化だと思います。データを活用して自分たちで問題解決ができる。大きな変化でした。」

Q. 今後のチャレンジについて

「私たち扇島LNG基地の特徴は、コンパクトであるということです。しかしガスの製造量は当社の大きなLNG基地と同等です。効率的に管理が行え、製造ができているということだと思っています。
また、私たちは近隣に発電所を持っており、私たちの基地が止まってしまうと、私たちの発電所を含めた近隣の発電所が止まってしまいます。私たちはインフラを支える企業として、その責任を果たしていきます。安全第一でこれからも社会産業に貢献していきたいです。 」

「DXをはじめとしてさまざまな取り組みをしていますが、できるだけ人を減らしていく、つまり現場で温度を見ているだけ、というような『働き方』を減らしていくことを目指しています。その分、メンバーにはより高いレベルの業務にチャレンジしてもらいたい。そういう意味でも、Sushi Sensorはとても良いツールだと思っています。」

Q. YOKOGAWAへの期待について

「困ったことがあったとき、YOKOGAWAにメールするとすぐに対応してもらえます。現場作業も一緒にやってくれています。また、代理店である西川計測さんにもとてもお世話になっており、困ったときにはすぐに頼っています。」

「Sushi Sensorですが、1-5Vや4-20mAのデータが取れて送信できると、用途が格段に広がると思います。また、窒素投入量などは、バルブに遊びがあって実際の量と異なる場合があるので、流量、パージ量、密度、熱量など、実際の値がさまざまに測れるようになるともっと便利になると思います。今後の機能アップに期待しています。」

製造グループ 中様、計装システムグループ 長重様、製造グループ 森實様、秋場様、小玉様
(左から)製造グループ 中様、計装システムグループ 長重様、製造グループ 森實様、秋場様、小玉様

業種

  • ガス・LNG

    最適な管理・制御・監視・支援システムや現場機器・分析計や計測器、保守サービスなどのソリューション・製品・保守を通じ、お客様のビジネスパートナーとしてガス事業の持続的な発展と環境保護の両立に貢献し、エネルギー産業の未来を支える重要な役割を果たし総合エネルギー供給事業の発展に貢献します。

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