概要
より早い、スムーズなプラントの立ち上げ
800MWx2基の石炭焚き超臨界発電設備の新規建設にあたり、より早い、スムーズなプラントの立ち上げ準備に横河のフルレプリカシミュレータを活用。
シミュレータの用途:
- 制御システムの制御ロジックの事前検証
- オペレータトレーニング

背景
電力需要が堅調な伸びを示している韓国では、自国のエネルギー源が限られていることや、環境への配慮から、高効率で環境に優しい発電が求められています。このような背景より、韓国発電公社の子会社である南東発電株式会社(以下、KOSEP)は、韓国・霊興島に、高効率でCO2, NOx, SOxの排出量の少ない、出力800MWx2基の超臨界発電設備を建設しました。
課題とソリューション
プラントコミッショニングでは、設備の動作確認やチューニング、また、それを動かす為の高いオペレーションスキルが要求されます。出来るだけコミッショニング中の時間ロスを少なくするために、事前に準備できることは済ませ、より早くスムーズなプラントの立ち上げを目指すというのがユーザーの要求でした。
この要求を満たす為、プラント試運転の1年前からプラントシミュレータを導入、制御システムを実プラントに実装する前に、制御ロジックをシミュレータ上で検証、事前にチューニングパラメータを調整しながら、新規オペレータの運転訓練にも活用するというソリューションが採用されました。このシミュレータには、実プラントの運転操作を高精度で再現できる、横河電機100%子会社テクコム・シミュレーションのフルレプリカプラントシミュレータが導入されました。
このシミュレータは、定常運転時精度:>99%、負荷変動時精度:>95%の演算精度で、演算周期は250msec以下、プラントの起動停止、定常・非定常運転、緊急処理など実プラントの状況に即した運転をサポートする高性能なフルレプリカタイプです。
今回のフルレプリカプラントシミュレータは、プラント側のプロセスを演算するメインコンピュータと、運転のシナリオを組み立てるインストラクターシステム、タービン、発電機、電気機器をエミュレーションするシステム、そしてプラントの制御システムである実機のDCSから構成されています。
制御ロジックの事前検証
シミュレータは、プラント試運転の1年前に納入され、KOSEPは、DCSの制御ロジックを実際の運転に沿って、シミュレータ上でテスト、検証しました。制御機能のチェック、制御パラメータのチューニング、非定常時・緊急時のプロセスの確認など、実プラントにDCSを設置する前に徹底的に確認されました。これにより、DCS設置時にはチューニング作業を最小限に抑えることができ、またプラント試運転時に起こりうるトリップも事前に確認しているため、スムーズにプラントを立ち上げることができました。
また、プラント運転開始後も、発電所の性能や機能改善のために新しい制御ロジックを導入する際には、シミュレータ上でその制御ロジックを事前検証することができ、シミュレータを制御機能の有効性を確認するツールとして使うことができます。
オペレータのスキルアップ
新規採用のオペレータ、熟練のオペレータともに新しいシステムに十分に慣れることができるよう、オペレータの技量に合わせたトレーニングがシミュレータを使って行われました。オペレータトレーニングでは、定常状態の訓練のみならず、非定常・緊急時の対応など様々なシナリオをシミュレータで作成し、新システムへの不慣れで起こりうる操作ミスを軽減、安全でスムーズな試運転、プラント立ち上げをサポートしました。
プラントシミュレータ
霊興島発電所(1、2号機)
オーナー: 南東発電株式会社
出力: 800MW x 2
プラント効率: 43.5%
運用: ベースロード
燃料: 瀝青炭
ボイラ: 超臨界圧、貫流、再燃式
タービン: タンデムコンパウンド、HP、IP、LP、再熱復水型
発電機: 円筒回転界磁形、水素冷却、三相同期発電機
シミュレータ: テクコム・フル・レプリカ・プラントシミュレータシステム(メインコンピュータ+インストラクターシステム+制御システム)