概要
みやざきバイオマスリサイクル株式会社、宮崎県
みやざきバイオマスリサイクル株式会社は、環境にやさしい鶏ふん処理を目指して、2003年に設立されました。宮崎県では、食肉用の鶏(ブロイラー)の飼育羽数が全国第2位で、その数は今後も増加の傾向にあります。これまで養鶏農家から排出される鶏ふんは、発酵堆肥として利用されてきました。しかし、鶏ふんの供給が過剰になり、堆肥としての利用に限界が近づいていました。こういった状況の中、この鶏ふん問題を解決する手段として、発電事業が始まりました。
発電方法は鶏ふんをボイラーで直接燃焼して発電する方法で、その焼却灰は肥料として土壌改善に利用されます。発電設備にはストーカ式ボイラーを採用し、鶏ふんの最大焼却能力は440t/日、発電出力は11,350kWで、燃料供給設備は周辺環境への臭気の影響を配慮した密閉型になっています。みやざきバイオマスリサイクル株式会社は、鶏ふんの焼却による環境負荷の低減、焼却熱による発電(サーマルリサイクル)、肥料の農地還元による焼却灰の資源リサイクルによって、「地球環境の保全」と「地域の資源循環型社会」に貢献しています。
みやざきバイオマスリサイクル株式会社の鶏ふん発電では、横河電機のCENTUM CS 3000生産制御システム、Exaquantumプラント情報管理システム、フィールド機器、分析計が発電設備の安定操業を支えています。
お客様の課題とソリューション
1. 安定運転
鶏ふんは、養鶏農家の管理や養鶏構造、または季節帯により、その含有水分量が大きく変動します。これに伴い発熱量も変化するため、燃焼効率や発電出力の変動が生じます。この変動を極力防ぐために、鶏ふんの受入、貯蔵、払出工程で鶏ふんを混合し、できるだけ含有水分量を均一化します。しかし、鶏ふんの混合を行っても、鶏ふんの含有水分量のばらつき、つまり発熱量のばらつきが残ってしまいます。 そこで、ボイラー系では主蒸気流量を一定に保つようなフィードバック制御を行っています。発熱量の変化に伴い、主蒸気流量が変動するため、目標値との差分が生じます。この差分が小さくなるように燃料である鶏ふんの供給量を常に補正します。一方、主蒸気圧力変動については、タービン系でガバナ弁開度を補正して制御します。これらの制御によって、鶏ふん発電設備の安定した運転を実現しています。
鶏ふんは、含有水分量が変化するといったことの他に、ナトリウムやカリウムなどの低融点アルカリ成分を多く含むといった特徴があります。この低融点アルカリ成分は、高温で溶融灰が炉壁や伝熱部へ付着し、効率の低下や点検・清掃回数の増加といった問題を引き起こします。この溶融灰の付着を軽減するためには、火炉出口ガスの温度管理が重要になります。合わせて、伝熱管の付着物を取り除くスーツブロアの運転管理も重要です。これらの運転管理は、CENTUM CS 3000生産制御システムによって、容易に監視、操作、管理ができるようになっています。
鶏ふん発電設備フロー
2. 安定立上げ
鶏ふん焼却ボイラーは、年1回の定期点検の他、炉内の簡易点検、付着した溶融灰の除去、掃除などで、年間35日程度停止します。
ボイラーの立上げ時は、A重油でボイラーを加熱し、加温後に鶏ふん燃料100%で燃焼します。この立上げ操作は、その進捗がグラフィック上 にわかりやすく表示されます。また、ATS(タービン自動起動)機能も備えています。これらの操作環境は、立上げ時におけるオペレータの負荷を軽減するとともに、安定した立上げに貢献しています。
中央制御室
オーバービューグラフィック
3. 臭気対策
鶏ふん発電では、周辺環境に配慮した臭気対策が実施されています。鶏ふん受入建屋、鶏ふん貯蔵サイロ等の臭気対策が必要な施設は、その臭気ガスをボイラーへの押込通風機によって吸気し、常に大気圧より低い負圧状態に保ちます。これによって、臭気が周辺環境に漏れることを防ぎます。吸気した臭気ガスはボイラー燃焼空気として炉内に供給し、臭気成分を熱分解しています。 炉内の臭気ガス、燃焼ガス、ばい煙が外部に漏れることを防ぐため、炉内圧は大気圧よりわずかに低くなるように、誘引通風機の運転を制御しています。この制御は、燃焼空気制御と連動しています。
鶏ふん発電は、燃料の特性から、化石燃料を使う発電とは異なる運転管理上の留意点があります。みやざきバイオマスリサイクル株式会社は、鶏ふんの良好な焼却、発電設備の安定運転、自動起動/自動停止など、制御システムを活用した運用で安定した操業を実現しています。
お客様の声
県内の養鶏農家から排出される1日400トン、年間約13万トンの鶏ふんを焼却し、一般家庭約17,000戸分の電気とリン・カリウムを豊富に含む肥料(焼却灰)を販売しています。私たちは、地元の畜産業と連携して、家畜排せつ物による地域環境問題の解決を図るとともに、鶏ふんをエネルギーと資源に変換することによって、循環型社会と環境保全に貢献しています。
鶏ふん専焼ボイラーは、日々変化する鶏ふん水分に応じた、最適な鶏ふん焼却量、燃焼空気量等の調整がユニットの安定運転のためには、必要不可欠となります。
導入した横河電機のプラント制御システムは、「制御性」「燃焼不安定等の予兆現象の早期把握」「各操作端の自動追従性」等に優れているため、少人数体制においても、迅速な処置対応が可能であり、結果、化石燃料と同等の高利用率での運転を実現することができました
プラントタイプ 発電出力 燃 料 ボイラー 蒸気タービン 貯蔵サイロ |
: バイオマス発電 : 11,350kW(発電端) : ブロイラー鶏ふん(起動時はA重油) : 自然循環ドラム型ボイラー(ストーカ炉)、蒸気量55t/h : 横型衝動抽気復水式 : 容量2,500m3×2基 |
業種
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