2019年7月24日発表
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
横河電機株式会社
株式会社日本総合研究所
東京電力ホールディングス株式会社
NEDOと横河電機(株)、(株)日本総合研究所、東京電力ホールディングス(株)は、中国広東省でエネルギー消費が大きく、生産品目の切り替えが多い工場を対象としたエネルギーマネジメントシステム(EMS)の実証運転を本日から開始しました。
本実証では、紡織とアルミ加工の2工場を対象に、最新のEMSであるFactory Energy Management Platform(FEMP)を導入し、消費エネルギーの大幅削減を図ります。また、2工場のFEMPを連携させ、それぞれの電力需要と系統からの電力需給調整の要求を集約することで、安定度の高いデマンドレスポンスの実現可能性を検証します。
本システムは、実証運転終了後も日中協力によって継続的に運用し、検証した技術や製品の中国国内や第三国への展開・普及を目指します。
ターボ冷凍機
スパイラル式熱交換器
図1 省エネ設備設置状況
1.概要
世界一のエネルギー消費大国である中国の省エネルギー市場規模は、年々拡大しており、2015年には5兆円を超えています。現在も中国政府の方針を受け、系統電力のデマンドレスポンス(需要応答)※1などと連携したエネルギーマネジメント推進策が拡大しており、省エネを含むスマートエネルギー関連市場全体に商機が広がっている状況です。
このような背景の下、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本の省エネルギー技術とアグリゲーション(集約)技術を実証するために、2017年9月に国家発展改革委員会と基本協定書(MOU)を締結しました。また、NEDO事業※2の委託先として横河電機株式会社と株式会社日本総合研究所、東京電力ホールディングス株式会社を選定し、これら3社が実施サイトを所有する互太(番禺)紡織印染有限公司と広東華昌鋁廠有限公司、また実施サイトの取りまとめを行う南方電網総合能源有限公司との間で協定付属書(ID)を締結しました(図2)。
図2 実施体制
拡大
また、同年12月にはエネルギー消費が大きく、生産品目の切り替えが多い中国広東省の互太(番禺)紡織印染有限公司(紡織)と広東華昌鋁廠有限公司(アルミ加工)の2工場に対して、冷凍機などの一部既存設備を省エネ設備に更新するとともにFEMP(図3)を導入し、その有効性を検証する実証事業に着手しました。
図3 FEMPとアグリゲーションのイメージ
拡大
そして今般、NEDOと横河電機(株)、(株)日本総合研究所、東京電力ホールディングス(株)は、2工場での機器の試運転を完了し、本日、実証運転を開始しました。実証運転は2021年3月まで実施します。
2工場に導入した最新のエネルギーマネジメントシステム(EMS)※3であるFactory Energy Management Platform(FEMP)によって、電力・蒸気などを効率的に供給し、消費エネルギーの大幅削減を図ります。また、2工場のFEMPを連携させ、それぞれの電力需要と系統からの電力需給調整の要求を集約してシミュレーションを行うことで、安定度の高いデマンドレスポンスの実現可能性を検証します。
なお、実証運転開始にあわせて、7月24日(現地時間)、中国広東省の2工場で国家発展改革委員会、広東省発展改革委員会、在広州日本国総領事館ほか関係者が多数出席し、運転開始式を行いました。
2.実証する技術の内容
- エネルギー需要・供給の改善および経営層による生産状況の把握
生産現場のエネルギーデータを収集し、エネルギー消費の変動をモニタリング・分析するFEMPの構築と、既存設備の更新を2つの工場で実施します。そして、生産現場やERP(基幹業務システム)と連携したエネルギー需要・供給の改善、エネルギー視点で生産プロセス、生産設備など生産現場の課題、問題点を発見して改善する生産プロセス改善、および経営層による生産状況の把握の有効性を実証します(図4)。
(1)高性能ヒートポンプなど高効率な省エネルギー機器への設備改善
(2)発電機、蒸気発生器などの運用効率を最大化するエネルギー供給改善
(3)エネルギー視点から効率的な生産プロセスへの助言や設備異常を発見する生産プロセス改善
(4)経営層が生産現場を把握することによる、経営の効率化の推進
図4 生産プロセス改善を含むFEMPのイメージ
拡大 - 複数工場の連携による高度なデマンドレスポンス
各工場に対する電力需給調整の要求(送配電会社である南方電網からの発動を想定)をFEMPで集約し、全体のエネルギー効率を最適化させる計画を策定します。これを基に、安定度の高いデマンドレスポンスが実現可能であることをシミュレーションにより検証します。
3.今後の予定
NEDOは、本FEMPを2工場で継続的に運用することにより、日本の省エネ技術を普及させる体制を構築し、日本のインフラ輸出への貢献を目指します。
また、横河電機(株)と(株)日本総合研究所、東京電力ホールディングス(株)は、本実証事業終了後も、検証した技術や製品について、生産品目の切り替えが多い、エネルギー多消費産業や小ロット多品種生産を行う工場が多数存在する中国国内や第三国への展開・普及に、協力して取り組みます。
【注釈】
※1 デマンドレスポンス(需要応答)
電力系統の信頼性低下時などに、需要家側が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させることです。
※2 NEDO事業
事 業 名:エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業/広東省における電力需給調整アグリゲーションに適用可能なエネルギーマネジメントシステム実証事業(中国)
事業期間:2017年度~2020年度
事業概要:https://www.nedo.go.jp/activities/AT1_00175.html
関連リリース:https://www.yokogawa.co.jp/news/press-releases/2017/2017-12-25-ja/
※3 エネルギーマネジメントシステム(EMS)
工場内のエネルギーの流れ、生産、消費状態を管理し、効率的なエネルギーの運用を実現するためのシステムです。
以上