2008年11月26日発表
横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:海堀 周造)は、光ファイバ試験器「AQ7275 OTDRシリーズ」に用途別の6モデルを追加、11月27日から販売を開始します。
OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)は光ファイバの長さや損失の測定、光ファイバの障害箇所の特定などのために、光ファイバの敷設工事や保守の現場で使用する測定器で、国内では当社がシェアトップ(当社調べ)です。
今回最新の「AQ7275 OTDRシリーズ」のラインアップを拡充することにより、幹線系からアクセス系まで光ファイバケーブルの敷設工事・保守で要求されるあらゆる用途に対応します。また、多心ファイバ測定時の作業利便性の向上等により、作業時間の大幅な短縮を実現します。
開発の背景
動画などの大容量データのやり取りが増えたことで、高速大容量のデータ通信が可能な光ファイバ通信網の整備が世界規模で進められています。大都市間の幹線系、都市内のメトロ系、電話局から電柱間のアクセス系などの光ファイバケーブル敷設工事が増加し、工事品質の確保や保守作業のためにOTDRの需要も増えています。
OTDRには、幹線系やメトロ系では、一本の光ファイバが長いため、高ダイナミックレンジ※1が要求されます。また、アクセス系やLANなど接続箇所が多いネットワークでは、デッドゾーン※2の短さが重視されます。さらに、光ファイバケーブルで使用する波長も1310nm、1490nm、1550nm、1625nm、1650nmなど多くの種類があり、これらの組み合わせでOTDRに要求される仕様が変わります。
これまで、当社は従来製品のAQ7260シリーズ(2003年発売)やAQ7270シリーズ(2006年発売)で、ネットワークの種類別、使用波長別に、用途に合った機能を持つモデルを提供してきました。しかし、最新のAQ7275シリーズはモデル数が少なく、対応できる波長やダイナミックレンジの範囲が限られていました。
そこで、今回用途別6モデルを追加することで、高性能な最新シリーズでもすべての用途をカバーできるようにします。また、機能やソフトウエアの追加で作業効率向上を支援します。
※1 ダイナミックレンジ:
識別可能な信号の最小値と最大値の比率。光ファイバ測定においては、ダイナミックレンジの値が大きいほど、長距離の測定が可能。
※2 デッドゾーン:
光ファイバの測定において、コネクタなどによる光ファイバの接続箇所が複数ある場合、それらが一定距離以下に近接していると、その接続箇所を認識できずに測定不可能となる。この測定不可能な範囲がデッドゾーン。
新製品の特長
- 基本性能の高いAQ7275シリーズに用途別6モデル追加
- 「735031」:波長1650nm対応の保守用1波長モデル
- 「735034」:幹線系、メトロ系対応の高ダイナミックレンジ2波長モデル
- 「735035」:波長1490nm対応のPON用3波長モデル
- 「735036」:波長1625nm対応の保守用3波長モデル
- 「735038」:WDM回線用3波長モデル
- 「735041」:LAN・FTTH対応のマルチモード/シングルモード両用4波長モデル
- 多心光ファイバ測定機能の搭載で効率アップ
心線が複数の多心光ファイバを測定する場合、これまでは一本一本の心線ごとに管理用データのファイル名称を設定し、これに対応する心線を探して順に測定するという煩雑な手順が必要でした。
AQ7275に搭載する「多心光ファイバ測定機能」は、測定する多心光ファイバの場所(地名)、ファイバ番号、心線番号などの情報をもとにあらかじめファイル名をテーブル化し、測定現場ではこのテーブルから順不同で測定する心線を選択して測定し、自動保存する機能です。これにより、現場での測定に要する時間を半減できます。 - 瞬断監視ソフトウエアの追加
光ファイバネットワークでは、凍結やコネクタの勘合不良などに起因する瞬間的な光信号の欠落(瞬断)が生じる場合があります。OTDR単体での測定では、瞬断を監視・検出することが出来ず、障害箇所を特定することが困難でした。
この瞬断監視ソフトウエア(オプション)を使用することで、瞬断時の波形記録により、障害箇所の特定が可能になります。
主な対象ユーザ
通信事業者、通信工事会社など
主な用途
光ファイバ敷設工事や保守サービスにおける品質評価
光ファイバの損失測定や障害点の特定など
以上