2009年12月15日発表
横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:海堀 周造)は、細胞の動きをリアルタイムに観察できる共焦点顕微鏡システムとして、システムを構成する機器をデスクトップサイズの小型筐体に収めた共焦点スキャナボックス「CellVoyager™ (セルボイジャー)CV1000」を開発、2010年1月5日から販売を開始します。
これまでは、共焦点スキャナユニットCSU、レーザ光源、EMCCD(電子増倍型CCD)カメラ、高精度電動位置決めステージ、インキュベータ(温度・湿度・CO2濃度を一定に保つ装置)など必要な機器・装置をユーザが組み合わせて共焦点顕微鏡システムを構築していましたが、「CellVoyager CV1000」を使うことにより、簡単に生きたままの細胞観察が可能になります。
共焦点スキャナボックス CellVoyager™ CV1000
開発の背景
医学、生物学、薬学、農学などの基礎研究分野や創薬研究などの応用分野でバイオ研究が発達するに伴い、従来のように細胞を固定したり切片にすることなく、生きた状態で細胞を観察することが一般的になってきました。また、近年ではES細胞やiPS細胞などに代表される万能細胞のメカニズム解明のため、長時間観察のニーズが高まっています。
ところが、これらの観察のためには、さまざまな機器を組み合わせて大掛かりな観察システムを構築する必要があり、システム構築の知識や経験のないユーザにとってはハードルの高いものとなっていました。
そこで当社は、生きた細胞の長時間観察に欠かせないツールとして世界中で広く使用されている当社の共焦点スキャナユニットCSUを中心に、各構成機器を一体化した共焦点スキャナボックス「CellVoyager CV1000」を開発しました。
新製品の特長
- コンパクトな筐体
生きた細胞の観察を可能にする当社の共焦点スキャナユニットCSU、励起用レーザ光源、微弱な蛍光も捉える超高感度なEMCCDカメラ、高精度電動位置決めステージ、インキュベータを、W54×D82×H53cmのコンパクトな筐体にまとめました。全ての機能を一体化したことで暗室環境が不要となり、研究室のデスク上で簡単に生細胞観察を行うことができます。 - 業界最先端の生きた細胞観察機能
共焦点スキャナユニットCSUの搭載により、レーザ光による試料細胞へのダメージ(光毒性)や蛍光褪色が最小限に抑えられ、生きた細胞の三次元、多色、長時間観察が可能です。
主な市場
医学、生物学、薬学、農学、創薬研究など細胞を扱う研究分野やこれらに関連する分野
用途
- 動植物における初期発生・分化過程の長時間多次元観察
- 細胞、組織の構造や生体反応変化のリアルタイム観察から長時間多次元観察
共焦点スキャナユニットとは
共焦点スキャナユニットは、通常の光学顕微鏡に取りつけて共焦点顕微鏡システムにする ことができるユニットです。当社の共焦点スキャナユニットCSUは、ニポウディスクとマイクロレンズアレイを組み合わせた画期的な方式※1を採用しています。蛍光試薬等で染色した試料にレーザを照射し、励起された蛍光を観察することで、きわめてコントラストの高い鮮明な画像を、任意の焦点距離で選択的に得ることができます。このため、試料を切片にすることなく生きたまま断層(スライス)画像を得たり、そのスライス画像データから三次元立体像を構築したりすることが出来ます。これらの特長により、共焦点スキャナユニットCSUは細胞内の動的変化をリアルタイムで観察する有力なツールとして世界中の研究機関に採用されており、累積納入台数は1500台を超えています。
※1 “多数のピンホールが渦巻き状に配置された回転円板(ニポウディスク)”を用いると、マルチビームスキャンができます。さらにこのニポウディスクのピンホールに光を集中させてより明るくするために、微小なレンズを格子状に並べた"マイクロレンズアレイ"を加えることにより、高速スキャン性能を保ったまま、光の利用効率を大幅に改善できます。
以上