横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

横河電機とInSpheroがパートナーシップ契約を締結

2020年12月3日発表

 横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:奈良 寿)は、創薬における薬理・安全性試験のために最適化された、in vitro三次元培養モデル(3D in vitroモデル)※1技術のパイオニアであるInSphero AG(インスフェロ)と、ハイコンテントアナリシス(HCA)※2における薬効や安全性評価手法の確立と推進を目的として、パートナーシップ契約を締結しましたのでお知らせします。両社は共同で、3D in vitroモデルを用いたHCAに取り組むお客様のために、高付加価値のHCAソリューションを提案し、創薬研究を支援します。

 InSpheroは、製薬業界およびバイオテクノロジー業界で行われているin vitro試験※1向けに、堅牢で生理学的に最適化された3D in vitro モデルを用いる試験受託サービス「3D InSight™プラットフォームサービス」を提供しています。世界の主要な製薬会社に導入され、薬理研究や安全性試験の効率向上を図るお客様を支えています。また、同社の細胞培養プレート「Akura™」シリーズは、96/384ウェルプレートや、チップ上に微細な流路を形成した生体機能チップ(organ-on-a-chip)上に三次元の細胞塊(スフェロイド)を培養したものです。このシリーズは、細胞のイメージングと自動化された環境に対応するよう精密に設計され、HCAからスフェロイド間の複雑な相互作用の観察まで幅広い用途で活用できます。

 当社のハイスループット細胞機能探索システム「CellVoyager(セルボイジャー)」シリーズは、細胞を高速にスキャンする当社の共焦点スキャナユニット「CSU」を搭載し、高精細に3D画像を取得、有望な化合物をスクリーニングすることが可能です。さらに、画像解析ソフトウエア「CellPathfinder(セルパスファインダー)」の持つ深層学習(ディープラーニング)機能を用いることで、フェノティピック解析※3のような複雑な画像解析を行うことも可能です。本パートナーシップ契約を通じて、両社は、創薬研究分野で急速に需要が増大しているHCA技術の向上を図ります。複雑な構造の3D in vitroモデルに起きる有益な薬理情報の抽出方法や疾患の病態生理の解明を通じて、新薬の早期開発に貢献します。

 また、本パートナーシップ契約の一環で、InSpheroは、当社の共焦点定量イメージサイトメーター「CQ1」を薬理・安全性試験プログラムの開発に使用し始めました。これまでも両社は共同で、創薬のための3D in vitroモデルを用いた最適なHCAの手法をライフサイエンスの専門誌SLAS Discoveryに発表※4しています。本パートナーシップ契約の締結により、ディープラーニング技術を活用した新しい評価手法の検討も行い、3D in vitroモデルを用いたHCAソリューションのさらなる向上や普及を目指します。

 InSphero CEOのJan Lichtenberg氏は、次のように述べています。「ここ数年、3Dスフェロイド・オルガノイドモデルは、創薬研究に用いる細胞として一般的なものとなりました。当社の3D in vitro モデルのテクノロジーは、従来の二次元培養細胞を使った実験や動物実験の手法に比べ、いくつもの利点があります。当社の3D in vitro モデルは、よりヒトに近いin vitro試験用細胞モデルを求める研究者に応え、臨床試験における薬理反応を模擬するために必要な生理学的に最適化された形態学的特徴を備え、長期にわたる培養が可能で、分析研究に適したカスタマイズを施しています。横河電機とのパートナーシップにより、生細胞の高品質な3Dイメージングのための横河電機の優れたシステムを活用して、創薬のための3D in vitroモデルを使用するHCA手法の最適化を行っていきます」。

 横河電機 執行役員ライフイノベーション事業本部長の中尾 寛は、次のように述べています。「当社は2050年に向けたサステナビリティ目標「Three goals」を掲げ、その一つとしてWell-beingの実現を目指しています。本パートナーシップにより、高品質な3D in vitroモデルの構築から複雑な解析までをシームレスに提供することが可能となり、スクリーニングの技術の向上、ひいては創薬のスピードアップに貢献していきます」。

InSphero AGの概要

  • 所在地:スイス チューリッヒ州シュリーレン
  • CEO:Jan Lichtenberg
  • 設立:2009年3月
  • 事業内容:三次元細胞培養モデルの製造・販売および同モデルを活用した試験受託サービス

HCAに関する横河電機の取り組み

 共焦点スキャナユニット「CSU」シリーズは、光学顕微鏡に取り付けて、生きた細胞内のたんぱく質の動きや生理反応を高解像度の画像で取得し、リアルタイムな観察を可能にするユニットです。「CSU」を搭載したHCAシステムとして、ベンチトップ型の共焦点定量イメージサイトメーター「CQ1」と、ハイエンドで業界最速クラス※5のスクリーニング性能をもつハイスループット細胞機能探索システム「CV8000」を「CellVoyager」シリーズとしてラインアップし、最先端の生物学・医学の基礎研究の効率向上や創薬のスピードアップに貢献しています。

※1 in vitro試験用三次元培養モデル(3D in vitro モデル):
 in vitro試験とは、創薬における薬理・安全性試験において、培養細胞に化合物を添加し、その反応を観察する試験のこと。三次元培養モデルは、培養細胞から作成された、高さと厚みを持たせた三次元のサンプルのこと。がんや脂肪肝を模した疾患モデルなどがある。

※2 :ハイコンテントアナリシス(High Content Analysis: HCA)
 創薬の現場では、新薬の候補となる化合物を添加されたことで起こる細胞内の変化を定量的に解析し、化合物の中から有望なものをふるい分ける(スクリーニングする)作業が行われる。HCAは、顕微鏡を中核としたイメージングシステムを用いて大量の画像を自動かつ高速で撮影、解析するまでの一連の手法を指す。

※3 :フェノティピック解析
 特定の生物現象に影響を与える化合物探索法の一種であり、多様なパラメーターを用いて細胞の形態変化を解析することで、薬効を評価する手法を指す。

※4 :当該論文
Wardwell-Swanson, J., Suzuki, M., et al. A Framework for Optimizing High-Content Imaging of 3D Models for Drug Discovery, SLAS Discovery June 2, 2020,
https://doi.org/10.1177/2472555220929291

※5 :当社調べ(2020年11月現在)

以上

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