2021年3月23日発表
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
横河電機株式会社
株式会社日本総合研究所
東京電力ホールディングス株式会社
NEDOと横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:奈良 寿)、株式会社日本総合研究所、東京電力ホールディングス株式会社は、2017年10月から2021年3月まで、エネルギー技術・システムを海外に普及させることを目的に中国・広東省で実証事業を実施してきました。その結果、独自のエネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入と高効率な省エネルギー機器への更新によって、目標値を上回る原油換算年間計11,432klの省エネ効果ならびに30,781t-CO2の温室効果ガスの削減を実現しました。また、生産プロセス改善によって年間2億640万円相当のコスト削減効果も引き出しました。
具体的には、現地で稼働する中国最大級の紡績工場と中国国内有数のアルミ製品工場において、既存設備の一部を省エネ設備に更新するだけでなく、エネルギー需給を高度に制御することで生産効率の向上と大幅な省エネを両立するEMSを導入・検証し、その有効性を確認しました。今後は、本実証事業で得た成果をもとに中国でエネルギー技術・システムの普及展開を図るとともに、さらなるエネルギー消費量の削減と生産性向上に貢献します。
図 FEMP®※1の構造
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1.概要
中国はエネルギー消費量が世界第1位となったことを背景に、省エネルギーを重要な政策として掲げました。すでに国家発展改革委員会が石油化学・製紙・紡績などの重化学産業や金属加工・電機・自動車などの製造業、病院などの業務用ビルといったエネルギー多消費産業に高い省エネ目標を課すなど、その影響は大きくなっています。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこうした動きを踏まえ、日本が強みを持つエネルギー技術・システムを民間企業によって海外に普及させることを目的に、海外の政府や公的機関などの協力を得ながら、現地の環境下における有効性を実証する事業に取り組んできました。
この一環として、NEDOと横河電機株式会社、株式会社日本総合研究所、東京電力ホールディングス株式会社は、中国・広東省で稼働する互太紡織印染有限公司(紡績)と広東華昌鋁廠有限公司(アルミ製品)の2工場を対象に、既存設備の一部を省エネ設備に更新するとともに、工場内の電力や蒸気などのエネルギー需給を高度に制御することで大幅な省エネや生産効率の向上を図ることができるエネルギーマネジメントシステム(EMS)として、株式会社日本総合研究所がコンセプト開発したFactory Energy Management Platform(FEMP®) を導入し、その有効性を検証する実証事業を2017年に開始しました。この結果、省エネ効果は原油換算年間計11,432kl(目標値を3.4%超過)、温室効果ガス削減は同30,781t-CO2(目標値を5.4%超過)を達成するなど、複数の成果を引き出すことに成功しました。
また今後、電力の需給調整が実施された場合に備え、複数のFEMP®を連携させることで全体の生産効率の最適化を図る高度なデマンドレスポンス※2についても実現の可能性を検証しました。
2.今回の成果
エネルギー供給改善による省エネや生産プロセスの歩留まり向上などを統合的に実現するFEMP®の構築と既存設備の更新について、その有効性を確認しました。また、中国南方電網有限公司(送配電会社)などから工場に対して電力需給調整の要求が発動されることを想定し、2工場に導入したFEMP®によってそれぞれの工場に対する要求を集約(アグリゲート)し、全体のエネルギー効率を最適化させる計画を策定しました。そこで見込まれた各工場の生産効率低下を最小限に留めるために、デマンドレスポンスを実行した場合の収支シミュレーションも行い、その有効性を確認しました。
- 高性能ヒートポンプなど高効率な省エネルギー機器への設備更新
2018年11月に互太紡織にスパイラル式熱交換器およびターボ冷凍機を、2019年6月には華昌アルミに高性能ヒートポンプおよびターボ冷凍機を設置しました。この結果、原油ならびに温室効果ガスの削減効果は互太紡織では目標値7,156kl/年、17,109t-CO2/年に対して実績値7,178kl/年、17,523t-CO2/年、華昌アルミでは目標値700kl/年、1,634t-CO2/年に対して実績値847kl/年、2,030t-CO2/年と、いずれも目標値を上回る削減効果を達成しました。 - 発電機や蒸気発生器などの運用効率を最適化するエネルギー供給改善
2020年8月1日より互太紡織で運転ガイダンスに従った最適運転を実施し、2020年10月20日までに年換算※3で11,228t-CO2の温室効果ガス排出削減効果を得ることができました。これを原油換算にすると、3,407klの削減効果を達成したことになります。また、最適運転を100%としたときの追従率は期間中90%以上を実現しました。 - 生産工程のエネルギー消費分析によって生産効率を最大化する生産プロセス改善
2020年7月から8月にかけ、互太紡織で試行しました。作業ノウハウの共有徹底や機械の不具合を事前に解消したことなどにより、トータルで12.9%の削減率を達成しました。この生産プロセス改善効果は、1,290万元/年=約2億640万円/年(1中国元=16円換算)に相当します。
3.今後の予定
横河電機株式会社と株式会社日本総合研究所、東京電力ホールディングス株式会社は今回の実証事業サイトを見学や説明の場として活用し、中国国内へのエネルギーマネジメントシステムの導入・普及を図ります。また、NEDOは本事業の実証技術の技術展示会への出展や成果報告会での発信などを通し、中国で本技術の普及に向けた活動を支援します。
【注釈】
※1 Factory Energy Management Platform(FEMP®)
工場などにおけるエネルギー消費の変動を安定化させるシステム。エネルギーの消費状況を示す「ダイナミックエナジーデータ」を安定させることで設備や人の稼働を安定化させ、省エネを図る。また、工場などの稼働全体が安定することから、人のミスの減少、品質向上、廃棄ロス減少といった生産プロセスの改善効果も目指すことができる。さらに、ダイナミックエナジーデータ安定化という同一の視点で設備や人の改善方策を共有することで、経営と現場が一体となった改善活動に取り組みやすくなることも期待されている。
※2 デマンドレスポンス
電力の市場価格の高騰時に、インセンティブの支払いを通じて需要家に電力使用を抑制してもらう仕組み。
※3 年換算
エネルギー供給改善から得られる効果については、2020年8月1日~2020年10月20日までの値を基に365日間稼働した場合の値として換算した。
以上
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