2023年10月24日発表
横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:奈良 寿)は、Yokogawa Poland(ヨコガワ・ポーランド)がポーランドのKrakowski Holding Komunalny SA(クラクフ市営会社 )が運営するKrakow WTE plant(クラクフごみ焼却発電所)に、横河電機の子会社で廃棄物・バイオマス発電や地域暖房の効率改善ソリューションを提供する Dublix Technology ApS(デュブリックス・テクノロジー、本社:デンマーク、ゲントフテ CEO:Asger Danielsen 以下、デュブリックス)の燃焼制御ソリューションのFuzEvent™を納品し、ごみ焼却量を2.5%(最大で年間5,500トン相当)向上することに成功しましたのでお知らせします。効率改善と合わせ、有害ガスの排出を政府の基準値内に抑えたほか、ごみ焼却発電に必要な蒸気流量を安定させることで最大の電力と地域暖房を同市に供給する効果も得られています。
クラクフごみ焼却発電所は、2016年に稼働を開始したポーランド最大の焼却発電所で、近代的な設計で良好に運営されてきました。年間24.5万トンの家庭ごみを処理する能力を有します。10万メガワット時/年の電力と、100万ギガジュール/年の熱を生産します。発電した電力は、ポーランド政府のGreen Energy認証を得て、政府の電力網に供給・販売されています。
多くの近代的なごみ焼却発電所は、ごみを燃焼させたエネルギーで蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回転させることで発電します。ごみは成分が一定ではなく水分や密度が異なります。特に、近年、欧州の多くの都市では広域からごみを収集するため、より複雑になっています。他の発電用燃料と比較するとエネルギーが一定ではなく、優れた設計のごみ焼却発電所であったとしても、従来のPID制御※だけで安定的に制御するのは難しいという課題があります。
ポーランドをはじめ、ヨーロッパの多くの国ではごみ焼却発電所の収益改善には2つの観点があります。1つ目は各プラントの制約の中で、ごみの燃焼状態を安定させることで蒸気の発生量を一定に保ち、プラントが持つ能力を最大限に発揮して発電量を増加させることです。2つ目はごみ焼却量に応じて廃棄物受取処理費用(gate fee)が支払われる仕組みがあるため、プラントの稼働率を上げ、ごみ焼却量を増やすことです。
デュブリックスのFuzEvent™は、デュブリックスのプロセスノウハウを生かした独自の高度な制御技術に基づく高性能の燃焼制御ソリューションです。プラントへの新たなセンサーの追加や、既存の制御システムの変更、高額な改修などを伴うことなく、既存の制御システムの一階層上に導入することができ、統合生産制御システム で一元管理できます。根本的な課題である「ごみの燃焼」にアプローチし、その燃焼を常に安定化させることで、プラントが持つ能力を最大限に発揮して生産する電力および地域暖房のエネルギー量を増加させるほか、焼却量を増やします。
本プロジェクトでは、ごみ焼却発電所に熟知し、各種シミュレーションに長けた専門家が、実現可能性調査でごみの焼却量や発電量や地域暖房としての熱供給の試算等のコンサルティングを行った後、過去の運転データと熟練運転員の運転方法を解析したうえでFuzEventを導入しました。その結果、発電量が増え、かつ、ごみ焼却量が2.5%(最大で年間5,500トン相当)増加しました。
横河電機執行役員 エネルギー&サステナビリティ事業本部長 中岡 興志は次のように述べています。「Dublixの高性能な燃焼制御ソリューションの導入により、お客様の指標数値を定量的に改善するとともに収益改善に大きく貢献することができました。当社は世界中のごみ焼却発電所のお客様に対し、独自の優れた技術とコンサルティング能力をもとに、収益改善の支援やESG経営の実現に寄与していきます」。
※PID制御:プロセス産業やファクトリーオートメーションの一部の基盤制御技術で、流量、温度、レベル、圧力、成分などの制御で幅広く一般的に使われます。現在の値と設定値との偏差に応じたP(比例)、I(積分)、D(微分)の各動作の計算結果を足し合わせた操作量で、「目標値」に向けて制御するものです。
Krakowski Holding Komunalny SA(クラクフ市営会社 )について
ポーランドの大企業300社のうちの一つであるクラクフ市営会社で、Krakowski Holding Komunalnyグループには、Miejskie Przedsi biorstwo Komunikacyjne SA(公共交通会社) 、Wodociqgi Miasta Krakowa SA (市営上下水道会社) 、Miejskie Przedsi biorstwo Energetyki Cieplnej SA(市営熱供給会社)、Arena Krakow SA(複合コンベンション施設)が含まれ、都市生活の快適さと質を支えています。
Krakowski Holding Komunalny SAは、税務処理を担当する資本税グループの親会社であり、25年間にわたり、1億ポーランドズウォティ以上の税収を得て、その全額を都市インフラ投資に充ててきました。
主に、循環経済(サーキュラーエコノミー)モデルにおける再生可能エネルギーをベースとした、資本グループ各社のエネルギー自給と気候中立性に努めており、企業内だけでなく、大学や科学機関との連携も含んだ国際的な交流を通じて、協力ネットワークを拡大し、クラクフ市に移転可能な近代的で革新的な技術にアクセスしています。
以上
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