工場の設備異常をもれなく素早く検知・特定できる一括温度監視を実現
工場設備の温度監視はこれまで、スポット的なセンサー監視や人に依存したパトロール監視が多く、技術・コスト面が障壁となってブランクエリアのない確実な温度監視が困難でした。一方、設備の老朽化、ベテラン社員の高齢化、人材不足などは続き、企業にとってHSE(Health, Safety, Environment/衛生・安全・環境)の実現は大きな課題となっています。
これらを解決するのが、横河電機の光ファイバ温度センサ DTSXです。光ファイバ温度センサーを活用した予知保全は、鉄鋼・電力・化学プラントや交通インフラなど幅広い分野で導入が進んでいます。
温度センサーに光ファイバを採用したDTSX
DTSXは、光ファイバケーブルの特性を生かしたセンシング技術で、測定対象の形状に沿って敷設できる温度センサーです。長距離・広範囲の温度変化をリアルタイムに検知し、設備異常を早期に検出できます。従来のポイント型温度センサーやサーモカメラでは困難であったエリアを含め、工場全体を測定・監視できるのが特長です。点と面に加え、線による常時監視は生産設備や社会インフラの予知保全に大きく貢献します。
DTSXで実現できる温度監視
- 監視距離: ~ 50 km
- 監視温度: -200 ~ 300 °C
- 最短監視周期: 約 5 秒
- 温度分解能: 0.03 °C
- 火災検知規格(EN 54-22)認証取得(DTSX1)
*: 各仕様は条件に依存
予知保全と予防保全の違い
「予知保全」とは
工場設備を「常時監視」し、トラブル発生の「予兆を検知」して行う保全方法です。製造ラインなどに設置したセンサーで収集したデータを分析・判断し、状態に応じて対策を講じます。CBM(Condition Based Maintenance)と類義です。
「予防保全」とは
工場設備を「定期的」に「点検・メンテナンス」し、トラブルを防ぐ保全方法です。設備の状態の良し悪しにかかわらず一定の時期が来たら部品交換などのメンテナンスを行います。TBM(Time Based Maintenance)と類義です。
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線形熱感知器 DTSX1
DTSX1 は、熱検知に必要な機能を 1ボックスに収納した熱感知器です。光ファイバケーブルで測定して温度データを高精度に解析し、高温の熱検出を行います。
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光ファイバ温度センサ DTSX3000
DTSX3000 は、「 1台で、もっと長距離で、もっと広範囲に渡っての温度分布監視がしたい」というご要望に応えて開発した光ファイバ温度センサです。長距離温度測定と、高い温度分解能に対応できる機能を備えたフラグシップモデルです。
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光ファイバ温度センサ DTSX200
DTSX200 は、温度測定対象や領域が小中規模で、光ファイバケーブルが短距離の場合に最適な、普及版機種です。低消費電力であることと、温度測定環境に左右されることが少ないため耐環境性に優れています。
詳細
光ファイバ温度センサ DTSXの特長
異常な温度上昇などの設備異常を検出できず放置しておくと、火災や故障などを招く可能性があります。DTSXは、温度変化をもれなく常時監視することによって効率的な予知保全を実現し、トラブルを未然に防ぎます。
24時間365日の常時監視
パトロールなどの人海戦術による監視は、作業負担が大きく危険を伴うリスクがあります。パトロール時以外にトラブルが発生すると発見が遅れ、被害が広がる恐れもあります。
DTSXは、測定対象に敷設することで遠隔から24時間監視が可能です。トラブルを迅速に発見できるうえ発生場所を特定できるため、被害を最小化できます。また、人の稼働を軽減でき、それに伴う危険回避やコストダウンも可能です。
長距離・広範囲の確実な温度監視
従来のポイント型温度センサーやサーモカメラ、パトロールで、長距離・広範囲をもれなく監視するには膨大なコストがかかり、確実な温度監視は困難でした。そもそも点や面では測定・監視しきれないエリアや、容易に人が立ち入れないエリアもあります。
DTSXは、光ファイバケーブルを使い最大50kmの長距離を途切れることなく高い精度で測定し、リアルタイムに温度変化を把握できます。工場全体を網羅的に温度監視することによって予知保全を実現します。
フレキシブルでシンプルな敷設
ポイント型温度センサーによる多点測定では点数分のケーブルが必要となり、システム構成や敷設工事が複雑でした。
DTSXのシステム構成はいたってシンプルです。測定対象の経路や形状に沿ってフレキシブルに敷設でき、光ファイバケーブル1本で測定します。光ファイバケーブルはそれ自体が導線であるため補償導線も不要です。他の温度センサーで長距離・広範囲の温度監視を行う場合に比べ、導入・運用コストを抑えられます。
生産制御システムとの高い親和性
温度監視ソリューションは、システムのライフサイクル全体を統合管理する生産制御システムや監視システムと連動してこそ真価を発揮します。
DTSXは、横河電機が得意とする統合生産制御システムDCS (Distributed Control System) や広域分散監視システムSCADA (Supervisory Control And Data Acquisition) などと高い親和性があり、統合管理・監視を容易に構築できます。測定はもちろん、設備全体の最適な管理・運用に貢献します。
生産制御システムとの連携例
高い耐環境性能
光ファイバセンサーはセンサー部分に電気・電子部品を使わないため、他の温度センサーに比べて高い耐環境性能を有します。
電源付近などの電磁波が発生している環境や落雷があっても電磁ノイズの影響を受けません。電気を使っていないため、防爆エリアでも使用できます。耐久性が高いことも特長で、長期にわたって安定測定ができ、監視システム全体のランニングコストを抑えることができます。
期待される効果
- 火災などの原因となりうる設備異常の早期発見と発生場所の特定により、事故を予防し安定稼働を実現します。
- 長距離・広範囲の24時間遠隔監視により、人材不足と監視コストの課題を解決します。
- 定期的に行う予防保全(TBM)から、状態に応じて行う予知保全(CBM)へ切り替えることにより、保全業務の効率と質を高めます。
アプリケーション紹介
大規模火災や機器故障によって生産ラインが停止した際の経済的・社会的損失は計り知れません。DTSXは、工場の安定操業を維持するとともに、お客様の資産と社会的信用を守ります。
バスダクト (バスバー) の常時温度監視
アプリケーションのマトリックス表
大容量の電流を安定的に生産設備へ供給するバスバーは、安全面への配慮から多くがバスダクトなどで覆われています。また天井裏や高所、床下といった危険かつ過酷な場所に設置されていることが多いため、異常過熱等の温度異常を早期に検知することが困難です。
バスダクト(バスバー)の温度を常時監視することで健全性を把握し、設備の予防保全の実現や安定稼働、BCP(Business Continues Plan)の実現を可能にします。
車載用リチウムイオン電池の製造
リチウムイオン電池は急激に温度が上昇し、熱暴走を起こすケースがあります。大量のリチウムイオン電池を製造する工場では、製造工程の棚や保管棚、排気ダクトなどにおける温度監視が不可欠です。
DTSXは、ケーブルを敷設するだけで大型の棚ももれなく網羅的に監視し、人の目が届かない天井裏のダクトの監視も可能です。予期せぬ操業停止によるサプライチェーンへの影響を回避します。
ベルトコンベアローラ
広大な鉱山プラントの長距離ベルトコンベアのローラ故障による火災発生は、予期せぬ操業停止につながりかねません。例えば、大規模鉱山ではたった一時間の操業停止が約5千万円もの生産ロスになります。
DTSX を活用することで、人的点検やポイント型センサーでは困難だったコンベア全ローラの常時遠隔監視ができ、操業停止の回避と安定操業に貢献します。
高温炉
製造業の現場ではさまざまな高温の炉が稼働しています。炉の内部に貼られている耐火レンガが経年変化などにより劣化・脱落すると、放熱が進み燃焼効率が低下するだけでなく、外壁の鉄皮が破れる事故やプロセスの緊急停止を招く危険性があります。
DTSXは、炉壁の表面温度変化を監視することで内壁の異常を迅速に検知し、トラブルを未然に防ぎます。
CAPEXとOPEXに優れたソリューション
光ファイバケーブルが温度センサーとなるため、現場にはそのケーブルを敷設するだけで電源などの供給、工事は不要です。光ファイバセンサーケーブルに機械的要素はないため故障することもありません。広範囲の温度監視する場合、他の温度センサーに比べてCAPEX(導入費用)とOPEX(運用費)を抑えて防災、保全コストを最適化します。
アプリケーション例一覧
アプリケーションと対応機種
関連情報
経済産業省よりバイオマス発電所における安全確保の徹底に関する文書が発行されています。設備・燃焼温度異常監視や一酸化炭素、メタンガス濃度検出など、バイオマス発電所の安全運転に対応する横河電機のソリューションをご紹介します。
ドキュメント&ダウンロード
カタログ
- 線形熱感知器 DTSX1 (1.1 MB)
- 光ファイバ温度センサ DTSX (1.2 MB)
動画
広大なプラントのオート監視における技術面、コスト面の課題をDTSX光ファイバ温度センサが解決します。
ニュース
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プレスリリース 2024年12月11日 洋上風力発電における海底電力ケーブル損傷の予兆を検知し、状態基準保全を可能にする「OpreX Subsea Power Cable Monitoring」を開発・発売
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プレスリリース 2024年2月15日 国内最大規模の洋上風力発電所である「石狩湾新港洋上風力発電所」に遠隔操作監視システムおよび映像監視ソリューションを提供
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