横河電機株式会社
横河ソリューションサービス株式会社

未来志向の対話で組織に新風を吹きこむ

未来志向の対話で組織に新風を吹きこむ

1915年に創業し、日本で初めて、電気計器の製造・販売をしたYOKOGAWA。その創業時から継承されている測定器事業の中核会社が、横河計測である。

横河計測は、100年余りにわたり培ってきた高精度の計測技術と、品質第一の精神で、グローバルに事業を展開。2023年度の業績は、過去最高水準となり、事業環境には順風が吹く。

しかし、VUCA時代の今日、市場変化のスピードはめまぐるしい。
「当社が持続的に成長し、市場の変化に対応するために何ができるか?」

経営者と若手の想いが一致し、2024年2月、横河計測が2040年にありたい未来像を描く、部門横断プロジェクトが発足した。本プロジェクトは、横河計測にどのような「火種」を灯したのか。プロジェクトを牽引した4人のメンバーに話を聞いた。

※本記事ではYOKOGAWAの代表ではなく、個人の見解として語っていただきました
※所属や役職は記事制作時(2024年12月)のものです

山下氏、友野氏、伊藤氏、苅田氏

 

盤石な事業だからこそ、危機意識を持つ

プロジェクトメンバーの一人、伊藤晶彦は、脱炭素ビジネス部門本部 で商品企画に従事する。彼は、何年も前から、計測事業の先行きに対する危機意識と、未来ビジョンを描く必要性を感じていた。

世界最高クラスの精度・安定度を誇る測定器を開発する横河計測は、測定器におけるグローバルリーダーであり、100年以上に及ぶ盤石な事業地盤を持っているように映る。にもかかわらず、なぜ伊藤はそう感じたのか。

「社会全体を俯瞰すると、世の中の大きな潮流の変化が見えます。計測器の市場においても、新規参入があったり、国から強力なバックアップを受けている企業が存在したりします。このような外部環境の変化に対して、自分たちも変化しなければならない。以前から当社でも、若手社員を中心とした未来シナリオを描くプロジェクトをやりたいと考えていました」

伊藤晶彦氏

そんな中、横河計測の社長として2022年に就任した鈴木俊之も、市場の劇的な変化への対策を検討し始めていた。そして事態は動き出した。伊藤の想いを知っていた未来共創イニシアチブ・プロジェクトリーダーの玉木が、新社長の鈴木に、本プロジェクトをリードする最適な人財として未来共創イニシアチブのメンバー、伊藤、山下、苅田、友野を推薦したのである。4名は、シナリオプランニングや、対話を通じて部門横断で「未来シナリオ」を描く経験を積んでいた。

「若い社員が中心となって、横河計測の未来像を描いてほしい」
鈴木をはじめとする経営層と若手社員の想いが混じり合い、本プロジェクトは動き出した。

 

自社の強さを発見

プロジェクトは、メンバー選定から始まった。

通常、経営や事業戦略に関連するプロジェクトのメンバーは、役員や部長による指名や、幹部候補生から抜擢されることが多い。しかし、今回のプロジェクトでは、メンバーを公募制とし、社員の自主性を尊重した。今のままで良いのかとの問題意識を持っていたメンバーが自ら手を挙げて参加。 メンバーは20代から30代半ばまで若手社員15名の構成となった。

まずは、内部環境分析を行った。伊藤は言う。「この機会に100年の歴史があるYOKOGAWAの計測器事業の強み、弱みを洗い出しました」。

若手、ベテラン、経営層、そして生産機能を持つグループ会社など、社外のステークホルダーにもインタビューを実施した。その数は50人以上に及んだ。伊藤は、商品企画の部署からは見えなかった強みを発見したと言う。

「当社の製品をお選びいただいているお客さまの声から、アフターサービスがグローバルレベルで強い、ということがわかりました。製品を販売した後、きちんとサポートする体制が日本だけではなく、海外でも高く評価されている。そういうサービス面の強みが明確になりました」

通信ビジネス部門本部 で、測定器の開発・営業・マーケティングに従事してきた友野弥生は続けた。「当社は、付き合いが長い代理店が多いため、製品知識やスキルが高くなる。これが、お客さまへのより良いアフターサービスへと繋がっているのではないでしょうか」。

 友野弥生氏

横河計測は、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国、東南アジア、インドなどに拠点があり、各拠点で修理・技術サポートが受けられる。当たり前だと思っていたサービスが、実は自社の強みだった。ステークホルダーとの対話を通じ、YOKOGAWAのグローバル力についても、改めて気づかされたのだ。

 

「尖った意見」を大事にし、同質化を避ける

2040年の未来像策定ワークでは、技術、マーケティング・営業、ファンクション部門でチームに分かれ、それぞれがビジョンを作成した。チーム分けは、あえてメンバーを職種で偏らせた。すると、それぞれの専門性を活かした尖った意見が出てきた。

営業部門の苅田将宏は、こう説明する。「尖った意見同士を共有することで生まれる相乗効果で、さらに独創的な意見を出したいと考えました」。会社組織にありがちな、「丸くまとめようとする姿勢」は、創造的に未来を描くうえでは足かせになる。

苅田将宏氏

Well-beingビジネス部門の山下貴史も続ける。「お互いの思っていることを素のままに言い合うと、一度は正面衝突をします。でも話しているうちに、いつの間にかそれぞれの意見が化学反応を起こし、さらに良い考えが引き出されました。プロジェクトの後半は、みんなのパッションを大切にしていきました」。 

友野も続ける。「仕事だけではなく、個人的な領域でも、参加者の想いが共有されました。2040年の自分がなりたい 姿、また、親や子としてどうありたいか?横河人、そして社会人として、どうありたいか…」。メンバーたちは、未来志向で、対話を重ねた

 

空気が変わり、ワクワクが始まった

さらに、山下は一つの例を挙げた。「測るって何だろうという問いを立て、いろんな人と議論しました。電気、光、圧力だけでなく、未来の計測には、たくさんの可能性があると考えるようになりました。未来のビジョンを周りに示すことで、メンバーを含め、ワクワク感を覚える人が増えてきたのです」

既存事業や製品の延長だけで考えない。未来のシナリオをゼロベースで探求し、個々の才能を活かし、革新的な製品を生み出す。将来への可能性と使命感が掛け合わさって、社員のワクワクが引き出される。伊藤は言う。「横河計測の未来、今後の事業戦略には、このワクワク感が大切なんです」。

山下貴史氏

苅田は言う。「2040年の未来を描く時、自分たちの計測技術が今のまま活かせるのか、現在の事業は盤石のままなのか、という問いを立てました。このような未来志向の対話がきっかけで、危機感を持った人も多いと思います。そういう意味で、このプロジェクトは一石を投じたと思います」。

本プロジェクトでは、部門や世代のみならず、会社の枠を超えて、数多くの対話を重ねた。その結果、社内コミュニケーションが活発になった。「部署が違うと、全く関わりが無いというメンバーもいました。このプロジェクトを通じ、部署間、そしてベテランと若手社員との間に交流が生まれたことも、大きな収穫です」と友野は言う。

伊藤も言う。「ベテランから若手へ、技術やスキルの伝承も当社の課題の一つです。その障壁を壊すきっかけになったと感じます」。

火種を絶やさないために

2024年10月、横河計測の2040年にありたい未来像は完成した。この活動の成果とは何か?その一つは前述の通り、「未来を考える」空気が生まれてきたことである。それに加えて、プロジェクトに参加しなかった社員にも好影響を与えた。

プロジェクト終了後のアンケート結果によると、「今回は参加できなかったが、次回の部門横断プロジェクトにはぜひ参加したい」と表明する若手社員が数多く出ている。

会社の文化に変化が生まれてきている。今年、横河計測では初めて、全社イベントの企画から実行までを入社1年目の若手に任せた。彼らは、見事にイベントを成功させた。ベテランが若手に機会を提供し、その期待に若手が応える。横河計測の中に、未来に向けて、自らを変革しようとする火種が育ちつつある。

社長の鈴木は、活動の成果について次のように語った。「Z世代やミレニアル世代といった若い社員の個性や想いが、理解できるようになってきた。一人一人、さまざまな個性や才能がある。これは会社の財産であり、それを発見できたのが最大の成果。これからも更に社員間の対話を進めていきたい」。

山下氏、友野氏、伊藤氏、苅田氏

結び

2024年に実施した本プロジェクトでは、さまざまなステークホルダーを巻き込むことができた。その結果、会社全体から支持を得られる空気が生まれた。一部の部署だけで行う部分最適ではなく、全体最適として、このプロジェクトが企業全体とアラインメントが取れたことが重要だ。

伊藤は言う。「ここで終わりではありません。今後は、『ありたい未来像』を 社員に向けて発信する予定です。そして、海外や社外にも輪を広げて若手、中堅、ベテランと対話をする。さらに『未来像』を、ブラッシュアップしていきます」。

多くの経営者が、企業文化や風土の改革といった経営課題に取り組んでいる。外部コンサルタントを起用しても、組織文化を変えることは容易ではない。しかし、その第一歩は、意外と身近なところにあるかもしれない。それは、自社の現場を経験し、自らの個性や才能を活かし、より良い未来に向かって熱い情熱を持つ「社員」の中にある。

組織は急には変わらない。継続が必要だ。本プロジェクトをきっかけに、新しい風が吹き始めた横河計測。
灯された火種から、変革の炎が広がるよう、同社の挑戦は続く。

取材メンバーの集合写真
左から:伊藤 晶彦、友野 弥生、玉木 伸之、山下 貴史、苅田 将宏(YOKOGAWA)

 

 

 

伊藤晶彦氏

伊藤 晶彦
未来共創イニシアチブ シナリオアンバサダー
専門分野:マーケティング戦略

趣味:歌を歌うこと、読書

山下貴史氏

山下 貴史
未来共創イニシアチブ シナリオアンバサダー
専門分野:事業開発

趣味:旅行、芸術鑑賞

苅田将宏氏

苅田 将宏
未来共創イニシアチブ シナリオアンバサダー
専門分野:営業

趣味:DIY、サイクリング

友野弥生氏

友野 弥生
未来共創イニシアチブ シナリオアンバサダー
専門分野:海外営業

趣味:ポイ活、ハイキング

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