YOKOGAWAは、世界各地で産業クラスターに関するプロジェクトに携わっています。そのひとつが、ヨーロッパ最大の港であるオランダのロッテルダム港で、産業間連携および相乗効果創出の好例となっています。
ロッテルダム港湾公社(Port of Rotterdam Authority、以下PoR) は、製油所、化学プラント、バイオ燃料精製所を含む広大なコンビナートを擁しています。PoR 内での産業間連携が進めば、電力、原材料、産業ガス、熱、蒸気などの資源の使用や、廃水処理などがより効率的にできるようになり、関係する企業の効率性と収益性の大幅な向上につながる可能性があります。
ロッテルダム港のコンビナート(写真提供:PoR)
サステナビリティの変革に向けたロッテルダム港湾公社(PoR)の取り組み
PoR は、2050 年までに、カーボンニュートラルで、より循環型の港になることを目指しています。現在、コンビナート全体のCO2 排出量の大部分はプロセスプラントによるものであり、PoR はこれらの排出削減を支援するためのさまざまな取り組みを推進しています。その取り組みは、例えば、製品の生産におけるより多様なサステナブルな原材料の採用促進から、産業クラスター内の複数の企業間の連携促進まで、多岐にわたります。これらは、エネルギーおよび化学プロセスにおいて大規模な変革をもたらし、デジタル化の拡大とステナビリティの高い目標設定によって推進されます。
YOKOGAWAは、PoR をはじめとする多くの産業クラスターがますます相互接続されたシステムへと進化することで、System of Systems(SoS)としての行動がより強化されていき、そして、これにより、競争優位性を維持しつつサステナビリティ目標達成に向け前進できると考えています。
産業間連携に関する調査
2023年9月、PoRと当社は、ロッテルダムの脱炭素目標への貢献を目指し、ロッテルダム港のコンビナートにおけるエネルギーとユーティリティの効率的な活用を促進し、複数のプラント間の連携を強化する実現可能性調査を開始しました。初期調査の結果、企業間で電力やユーティリティを最適化することで、最大5%の費用削減が可能であることが判明しています。
一般的に、企業は、それぞれの運用を高度に最適化しています。しかし、機密情報の漏洩に対する懸念から、他社と連携してさらなるエネルギーと資源の節約を図る「企業の枠を越えた取り組み」には消極的です。PoRとYOKOGAWAは、各社の情報の機密性を確保しながらも高度な産業間連携を実現し、コンビナート全体での生産最適化による大幅な効率向上の可能性を引き出そうとしています。
パイロットプロジェクト
実現可能性調査の結果を踏まえ、PoR、YOKOGAWA、KBC、Distro Energy は、現在、コンビナート内の企業とともに、 1年間の大規模なパイロットプロジェクトを開始しました。パイロットプロジェクトには、最大6 社と 2つの電力網(パワーグリッド)運営会社が参加しています。YOKOGAWAは、これらの企業の一部と、数年にわたる協力関係の中で信頼関係を築いてきました。この信頼関係が企業内から企業間へと広がることで、当社は産業クラスター内での信頼できるパートナーになりつつあります。
企業のエネルギーに関するデータは、複数のユーティリティの利用と交換を企業間で調整できるようにする統合管理プラットフォームの構築に使用されます。プロジェクトの期間中、この調整はシミュレーション環境の中で行われますが、このようなデータ交換が産業規模で行われるのは初めてです。セキュリティの保たれたデータ交換は、このプロジェクトでは非常に重要であり、参加企業にはデータフローを管理するための産業用クラウドインフラが提供されます。さらに、YOKOGAWAと KBC によるクラスターエネルギー管理システムが、エネルギーフローの最適化を実現します。企業およびエネルギー市場間の取引に対する金額換算は、Distro Energy の取引プラットフォームで行われます。これにより、さまざまなエネルギーの増減や CO2 の影響がそれぞれ数値化され、評価されます。
最後に
このように、PoRとYOKOGAWA のパイロットプロジェクトは、サステナブルな未来を目指す産業間連携の変革の可能性を示しています。協力し合うことで、より効率的でよりサステナブルな産業の姿に近づくことができます。YOKOGAWAは、この取り組みが世界中の産業クラスターを刺激し、地球規模でのサステナブルな発展を促進することを願っています。
(*)産業クラスター
マイケル・ポーターが提唱した概念で、ある地域に、相互に関連する企業や組織(サプライヤ、関連産業、大学、政府機関など)が集まり、競争しつつ同時に協力している状態。クラスターに属する企業は、イノベーション能力を高めることができると言われています。
代表例として、情報通信産業が集積したアメリカのシリコンバレー(IT)、デトロイト(自動車)などがあげられます。日本でも経済産業省主導のもと、各地で産業クラスター計画が進んでいます。
ロッテルダム港湾公社(Port of Rotterdam Authority)について
ロッテルダム港湾公社は、物流拠点としてだけでなく規模と質両方において世界トップクラスのコンビナートとして、ロッテルダム港の競争力を強化することを目指しています。港湾公社では、ロッテルダム港の持続可能な開発・管理・運営、船舶の円滑かつ安全なハンドリングの維持、ロッテルダム港の未来に向けたレジリエンスの確保を重要な課題としています。
https://www.portofrotterdam.com/en
【ロッテルダム港湾公社とロッテルダム港の詳細】
- ロッテルダム港湾公社:従業員数約1,270名、収益約7億7000万ユーロ
- 港湾エリア:12,500ヘクタール(陸上・水上合わせた面積、約6,000ヘクタールの工業用地含む)。港湾エリアは全長40キロメートル以上
- 貨物取扱量:年間約4億7000万トン
- 船舶数:年間で外洋航行船約30,000隻、内陸航行船約100,000隻
- 雇用:オランダ国内で565,000人(直接・間接問わず)
- 付加価値:630億ユーロ、オランダGDPの8.2%
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